写真=SK hynix

SK hynixは29日、主要顧客を含む10社超との長期供給契約(LTA)交渉を完了したと明らかにした。契約期間は原則5年で、顧客の購入確約に加え、預託金など契約履行を担保する仕組みも盛り込んだ。あわせて、2027年のHBM供給量と価格について主要顧客と協議を進めていることも公表した。

同日の2026年4~6月期決算説明会で、コーポレートセンター担当のソン・ヒョンジョン社長は、今回のLTAについて「単なる数量供給ではなく、中長期の供給安定性を確保し、顧客の技術ロードマップに合わせて次世代メモリを共同で進めるための戦略的パートナーシップだ」と説明した。主要顧客との追加協議も継続しているという。

同社は、メモリ市場の逼迫した需給が当面続くとの見方も示した。HBMやAIサーバ向けメモリで使う先端プロセスの難易度が上昇しているうえ、新規生産施設の建設にも時間を要するため、短期的な需給改善は見込みにくいとする。こうした環境を背景に、顧客側でも中長期の安定調達を重視する動きが強まっているという。

LTAの価格体系については、市況変動に対応できるよう、顧客や製品の特性に応じて複数の方式を採用したと説明した。LTAが総販売に占める比率は開示していない。市場環境と顧客需要を踏まえて適切な水準で運用し、業績下振れリスクを抑えつつ、市況が良好な局面では追加需要も取り込める柔軟性を維持する方針だ。

同社はHBMを軸に安定した収益基盤を確保しており、NVIDIAをはじめとする主要AI顧客との長期的な取引関係がそれを支えているとした。供給能力の確保に向けては、M15Xの量産時期を前倒しする。2027年初めにヨンイン第1期ファブのクリーンルーム開設後、速やかに生産能力を拡大できるよう投資も進めており、2026年の投資額は40兆ウォン台後半を見込む。

HBM4は4~6月期に量産出荷を開始した。現時点の量産歩留まりは、品質が安定している前世代品に近い水準に達しているという。新製品の立ち上がり初期としては高い水準で、下期の生産拡大を支える要因になると説明した。顧客が求める動作速度を実現しつつ、電力効率とコスト競争力も確保したとしている。

HBM4Eは上期に主要顧客向けサンプル出荷を終えた。技術の成熟度と量産安定性を備えたプロセスを適用し、2027年の本格量産を目標に開発を進めている。次世代技術では、ハイブリッドボンディングに加えてiHBMも開発中だ。パッケージ内部に冷却要素を組み込み、熱抵抗を従来比30%以上低減する技術で、HBM5など次世代製品の発熱対策を見据える。

競合各社のHBM競争力が急速に高まっているとの見方については、性能を実現するだけでは競争優位は築けないとの認識を示した。発言はSamsung Electronicsを念頭に置いたものとみられる。Samsung Electronicsは足元で、HBM3E競争時とは異なり、サンプル出荷を早期に終えて量産準備段階に入っている。

SK hynixは、顧客が求める性能を、安定した歩留まりと品質で大量供給できる能力まで含めて競争力だと説明した。市場投入の時期、製品性能、量産歩留まり、品質、顧客からの信頼といった要素で積み上げてきた競争力は、短期間では築きにくい差別化要因だと強調した。HBMは高付加価値製品であるだけに、不良発生時の顧客負担やシステム全体への影響も大きいと付け加えた。

また、同社は主要顧客と2027年のHBM供給量と価格を協議していることも明らかにした。汎用DRAMの価格上昇がHBMの価格交渉に一部影響する可能性はあるものの、HBM価格は汎用DRAMの値動きだけで決まるものではないと説明する。HBMは汎用DRAMに比べ、ウエハーや先端プロセス、TSV、パッケージングでより多くの生産能力を必要とし、世代が進むほど開発や認証プロセスの複雑さも増すためだとしている。個別顧客との契約条件や具体的な価格には言及しなかった。

NANDフラッシュでは製品ラインアップの拡充も進める。AI市場が学習中心から推論中心へ広がるなか、NANDがAIシステムのメモリ階層を構成する中核要素になりつつあると位置付ける。AIデータレイクやHDD代替分野には大容量QLCベースのeSSDを投入し、KVキャッシュのオフロードなど新たな用途には、新たな階層を担うAIストレージ製品で対応する方針だ。

7~9月期の出荷計画は、DRAMが前四半期比で約10%増、NANDフラッシュが1桁前半の増加を見込む。HBM4の出荷拡大と1cナノベースの汎用DRAM出荷増を背景に、下期のビットグロースは上期を上回る見通しだ。HBM4の販売拡大と高付加価値製品の構成比上昇が、ブレンデッド平均販売価格(ASP)の改善にも寄与するとしている。

4~6月期のDRAM ASPは約30%、NANDフラッシュASPは50%台半ば上昇した。LTAで確保した数量とHBM4の立ち上がりが、この価格環境の中で下期業績にどう寄与するかが焦点となる。

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