写真=Skylo。共同創業者兼CBOのタルン・グプタ氏

NTN(非地上系ネットワーク)を手がけるSkylo Technologiesが、韓国市場での事業展開を本格化する。専用端末や外付けアンテナを使わず、一般的なスマートフォンを衛星に直接接続する「D2D(Direct to Device)」技術を武器に、韓国の通信事業者との導入協議を進めている。

同社は7月28日、ソウル市竜山区で技術説明会を開き、D2D衛星接続技術の概要とグローバル事業の現状を公表した。

Skyloは、MITやスタンフォード大学出身の技術者や科学者らが設立した衛星接続技術企業。Samsung Catalyst Fund、Intel Capital、BMW i Venturesなどが出資し、累計調達額は1億8000万ドル(約270億円)に上る。

D2Dは、携帯電話の基地局がない場所でも、スマートフォンが衛星と直接通信できる技術だ。従来の衛星通信のように専用アンテナや別端末を必要とせず、モバイル通信規格に準拠した既存のチップセットや端末を活用できるのが特徴という。

同社は3GPP標準をベースに、衛星事業者、移動体通信事業者、チップセットメーカー、端末メーカーの相互接続を支える。対応領域はスマートフォンにとどまらず、スマートウォッチ、車載機器、IoT機器にも広がる。既存の携帯契約で使っているSIMや端末をそのまま利用できる点も強みとして挙げた。

共同創業者兼CBOのタルン・グプタ氏は、衛星ネットワークは地上の移動体通信網を代替するものではなく、補完する役割を担うと強調した。山間部や離島に加え、高速道路や海上など移動中に通信品質が不安定になりやすい環境でも活用でき、通信の途切れや圏外の解消に役立つと説明した。

グプタ氏は「衛星通信は、地上網が届かない場所で最初の接続手段を提供する役割を担う」と述べ、「雪で立ち往生した車両や、海上で漂流する船舶などの緊急時には、人命救助につながる手段になり得る」と語った。

同社の技術は、静止軌道、中軌道、低軌道といったさまざまな高度の衛星通信に対応する。現在の商用サービスは静止軌道衛星が中心だ。既存の衛星と市販端末を活用する仕組みのため、新たな衛星打ち上げや大規模な地上設備投資を伴わずにサービスを拡大できるとしている。

商用サービスはすでに5大陸37カ国で展開している。2025年6月時点で、ネットワークに接続した機器は約700万台に達した。Samsung Electronicsのほか、Google、Qualcomm、Verizon、Orange、Garminなどと協業している。

移動体通信事業者にとっては、自社保有周波数を衛星用途に振り向ける必要がなく、提携する衛星事業者が保有するライセンス周波数を活用できるため、初期投資を抑えやすいという。既存料金プランに衛星接続機能を組み込むほか、プレミアムプランや付加サービスとして提供することで、収益機会の拡大も見込めるとした。

グプタ氏は「韓国は移動通信インフラが高度に整備されているが、一部地域や移動環境ではなお接続性の補完が必要だ」とした上で、「既存の衛星と商用機器を活用できるため、大規模な設備投資なしでもサービスを広げられる」と述べた。

さらに「通信事業者はARPU(加入者当たり平均売上高)の向上に加え、既存契約者の解約抑制も期待できる」とし、「海上、山岳、物流、自動車など、既存の移動体通信網だけでは対応が難しかった領域へ事業を広げる効果もある」と語った。

Skyloは現在、韓国の移動体通信事業者ともサービス導入の可能性について協議している。ただ、具体的な提携先や韓国でのサービス開始時期は明らかにしていない。各国の規制当局と協議し、現地の法制度に合わせてサービスを提供する方針だという。

説明会では、一般的なスマートフォンを使った緊急救助要請サービスのデモも実施した。利用者が自動車や船舶など移動手段を選び、現在の状況を入力すると、衛星ネットワーク経由で救助要請メッセージを送信する仕組みだ。各国の制度や運用方式に応じて、警察や消防など現地の救助機関との連携も可能としている。

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