OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は、AIが広く普及しても社会全体の労働時間は短くならないとの見方を示した。生産性が上がっても、競争心理やより高い成果を求める社会構造が働き、週4日制の拡大には直結しないとみている。
Business Insiderが27日(現地時間)に報じたところによると、アルトマン氏はポッドキャスト番組「Relentless」のインタビューで、AIが週4日制や労働時間短縮をもたらすとの期待に慎重な考えを示した。
アルトマン氏は、「技術は長年にわたり、人々の労働時間を減らし、余暇を増やすと約束してきたが、現実はそうならなかった」と指摘した。そのうえで、社会全体で労働時間が大きく短縮される流れは実現しておらず、AIもそれを一変させることはないだろうとの見方を示した。
背景として挙げたのは、人間の競争心理だ。AIによって生産性が高まっても、人々は仕事を減らすのではなく、さらに大きな成果を求めるようになるという。他者との比較の中で自らの立ち位置を測る相対的な競争構造からは、容易に抜け出せないとの認識も示した。AIが人間の労働を代替し、余暇が増えるとする従来の楽観論とは一線を画した格好だ。
また、アルトマン氏は「超知能が実現した後の世界でも、私たちは想像以上に忙しくなる」とも語った。人々は不満を口にしながらも、最終的にはそうした環境に適応していくとの見方を示した。
今回の発言は、新型コロナウイルス禍後に広がった週4日制を巡る議論とも重なる。週4日制は、従業員の燃え尽き症候群の抑制や勤務の柔軟性向上につながる選択肢として注目されてきた。実際、2023年には、一部の中小企業で導入後に従業員の士気や生産性が改善したとの報告も出ている。
一方、足元では企業経営陣による週5日出社への回帰も強まっている。午前9時から午後9時まで、週6日働く「9-9-6」文化も再び取り沙汰されており、労働時間短縮への期待とは逆に、長時間労働を求める流れも続いている。
アルトマン氏は「私たちはいまシンギュラリティの中にいる」とも述べた。シンギュラリティは一般に、AIが人間の知的能力を超えた後、技術進歩や社会変化の予測が難しくなる転換点を指す。同氏は、こうした現象が世界にとって極めて前向きな変化になり得ると評価した。
アルトマン氏の発言は、AIによる生産性向上がそのまま労働時間の短縮につながるわけではない、という点を改めて示したものといえる。技術そのものよりも、人間の競争心理や成果を追求する社会のあり方が、働き方を左右するとの見方だ。