高市早苗首相は27日、自身の名前を冠した暗号資産「サナエトークン」について、承認した事実も関与した事実もないと国会で改めて否定した。首相秘書官が関係者と接触していたことも明らかになっており、官邸側が同プロジェクトを暗号資産と認識していたかどうかが焦点となっている。
ブロックチェーンメディアのU.Todayによると、高市首相は衆議院で、当該トークンの存在自体を把握していなかったと説明し、関与を否定した。
今回の問題は、著名政治家の名前を使ったトークンが出回ったことだけにとどまらない。誰でも比較的容易に暗号資産を発行できる環境のなか、著名人名義のトークンは珍しくないが、今回は高市首相の首席広報秘書官であるキノシタ・ツヨシとの接点が取り沙汰されたことから、政界の論点に発展した。
サナエトークンは、実業家のケン・マツイとつながりのある人物らが開発したと伝えられている。キノシタ氏は、マツイ氏側の事業関係者と連絡を取ったことは認めた一方、認識していたのは暗号資産ではなくアプリ内ポイントだったと説明した。官邸関係者が当該プロジェクトを暗号資産と理解した上で接触していたのかどうかが、最大の争点となっている。
高市首相は国会答弁で、自身や首相側とプロジェクトとの直接的なつながりを否定した。ただ、秘書官側の認識を巡っては、なお検証の余地を残している。
今回の論争は、日本政府のWeb3推進路線とも重なる。高市首相はこれまで、日本のWeb3・ブロックチェーン産業の育成に前向きな立場を示してきた。保守色の強い現政権も、トークン化や関連する暗号資産事業を後押しする一方で、詐欺や無断発行への対策強化を進めている。
そうしたなかで政治家名義のトークンが実際に流通し、首相側近の接触可能性まで浮上したことは、日本の制度整備上の課題を改めて浮き彫りにした。市場育成や投資活性化を進めるとしても、著名人を前面に出したプロジェクトや無断発行にどう対処するかは、規制の信頼性に直結するためだ。
日本では、暗号資産を巡る制度化の議論も続いている。サツキ・カタヤマ財務相は最近、米国にならい暗号資産の上場投資信託(ETF)の承認手続きを進めていると明らかにした。2028年までに初のビットコインファンドが承認される可能性も取り沙汰されており、日本政府は産業育成、投資商品の制度整備、違法・無断発行の抑止という3つの課題を同時に抱える局面にある。
もっとも、今回の直接の争点はサナエトークンそのものより、首相秘書陣がどこまで関与していたかにある。高市首相が関連を明確に否定したことで、今後はキノシタ氏がどのような性格の事業と接触していたのか、また当該プロジェクトが政治的信用を利用したのかが、引き続き注目点となりそうだ。