米連邦準備制度理事会(FRB)のケビン・ウォーシュ議長が臨む今週の連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、市場では利上げ観測が強まっている。イランと米国の交戦再開を受けて原油価格が再び1バレル=100ドルを上回り、エネルギー価格起因のインフレ懸念が再燃。これを受けて米欧の国債には売りが広がり、長期金利は高水準に切り上がった。
26日付のCryptopolitanによると、今回のFOMCは火曜日に始まり、ウォーシュ議長の就任後2回目の会合となる。先物市場では、1週間前まで10%未満だった0.25ポイントの利上げ確率が、週末時点で36%まで上昇した。
投資家の間では、9月までに少なくとも1回の利上げが実施されるとの見方が強まっている。さらに今後9カ月以内に、0.25ポイントの追加利上げが1〜2回行われる可能性も意識され始めた。
市場の見方を変えた主因は原油高だ。2月末の戦争開始以降、原油市場はワシントンとテヘランを巡る軍事的緊張の強弱を背景に大きく変動してきた。
これまで市場では、仮にホルムズ海峡の封鎖が現実味を帯びても、物価への影響は一時的にとどまるとの見方が優勢だった。ただ、原油価格が1バレル=100ドルを超えたことで、こうした見方は急速に後退した。
その結果、米欧の国債市場では売りが広がった。債券価格は下落し、利回りは上昇した。
米10年債利回りは18カ月ぶりの高水準に上昇。ドイツとフランスの10年債利回りも約15年ぶりの高水準を付けた。長期金利の上昇は、市場がインフレの持続性をこれまで以上に意識し始めた兆候と受け止められている。
米経済指標も、FRBの判断を難しくしている。24日に発表された週間の新規失業保険申請件数は1969年以降で最低水準となり、雇用市場の強さを改めて示した。
6月の消費者物価上昇率は3.5%に低下したものの、FRBの物価目標である2%とはなお隔たりがある。景気が底堅く、雇用も堅調な局面で原油高が重なれば、FRBは政策据え置きを続けにくくなるとの見方が市場で広がっている。
ウォーシュ議長は、金融政策の方向性について事前に明確なシグナルを出さない姿勢を取っている。今月の議会証言でも、政策判断に関する具体的な手掛かりは示さなかった一方、利上げ・利下げの前に方向性をにじませる従来の慣行を減らす考えを示した。
ウォーシュ議長は議員に対し、「政策運営を適切に行うことができれば、過去5年間のインフレ急騰はいずれ過去のものになる」と述べた。
一方で、どの物価指標を最も重視するのか、どの経済データを最も信頼するのかについては明言を避けた。その代わりに、内部のタスクフォースで再検討する考えを示した。これは、過去20年にわたりFRBが比較的積極的に政策シグナルを発してきた手法とは異なるアプローチだ。
議会では、こうしたウォーシュ議長の曖昧な姿勢を巡る質疑も続いた。ニューヨーク州選出の民主党下院議員リッチ・トレスは、ウォーシュ議長が4月の指名承認公聴会で、月ごとの変動が大きい項目を除いた物価指標に前向きな言及をしていた点を改めて取り上げた。
ただ、ウォーシュ議長は特定の指標を支持したことはないと強調した。「どの指標も基調的なインフレを示すうえで決定的に優れているわけではない」と述べたうえで、「特定の指標に明確な好みがあるなら、タスクフォースを立ち上げて原点から見直すとは言わなかっただろう」と語った。
今後のコミュニケーションの在り方もなお定まっていない。ウォーシュ議長は、前任のジェローム・H・パウエル前議長が続けてきた、毎会合後の記者会見日程を維持するとは明言しなかった。
パウエル前議長は各会合後に、経済判断や委員会内の見方を説明してきたが、現在はFRBのコミュニケーション・タスクフォースが記者会見の日程自体を再検討しているという。
ウォーシュ議長は先月、記者団から利上げの条件を問われた際にも、事前のガイダンス提示を拒んだ。「次に何をするかについて、いかなるフォワードガイダンスも示せない」と述べ、「6週間後に会合があることが唯一の手掛かりだ」と応じた。
また、すべての政策会合が開始前から結論ありきで進むべきではなく、内部で激しい議論が交わされる場であるべきだとの考えも示した。
こうしたなか、今週のFOMCの焦点は単なる政策金利の決定にとどまらない。原油高、堅調な雇用、なお高い物価が重なるなかで、ウォーシュ議長が実際に初の利上げに踏み切るのか、それとも不確実性を残したまま市場との対話にとどめるのかに注目が集まっている。