海外投資家が暗号資産取引所の無期限先物を通じ、中国のAI半導体企業に上場前から資金を振り向けていることが明らかになった。中国本土株に直接投資しにくい海外勢が、暗号資産デリバティブを使って上場前の値動きを先回りして売買する動きが広がっている。
26日付のブロックチェーンメディア「Cryptopolitan」によると、海外投資家は中国のメモリ半導体メーカーChangXin Memory Technologies(CXMT)の上場を前に、暗号資産取引所で同社株に連動する無期限先物を活発に取引している。
CXMTは28日に上海証券取引所のSTAR市場へ上場する予定で、調達額は約100億ドル規模となる見通しだ。計画通りなら、中国本土では2010年以降で最大級の新規株式公開(IPO)となる。TradeXYZとGate.comは正式上場に先立ち、CXMT連動の無期限先物の取り扱いを始めた。CoinGlassによると、CXMT無期限先物の直近24時間の出来高は約1900万ドルに達した。
この商品は、現物株を保有せずに株価の上昇・下落を売買できる仕組みだ。暗号資産取引所で24時間取引され、一般にステーブルコインを証拠金として使う。満期がない点も特徴だ。
無期限先物はもともと、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など暗号資産の値動きに投資する商品として広がったが、足元では株式や商品、未上場企業関連など伝統的な金融資産にも対象が広がっている。
業界では、こうした商品が外国人による中国本土株投資の制約を回避する手段として機能しているとみている。中国は上海、深セン両市場への海外資金の流入を厳しく制限しており、外国人投資家が利用できる経路は、適格外国機関投資家(QFII)制度や香港ストックコネクトなどに限られる。
CXMTが上場するSTAR市場も参入障壁は高い。中国の個人投資家でも、少なくとも50万人民元の金融資産と2年以上の投資経験がなければ売買できない。一方、無期限先物は現物株の受け渡しを伴わないため、こうした資格要件の対象外となる。
TradeXYZは23日、中国の半導体企業GigaDevice Semiconductorに連動する無期限先物も新たに投入した。最大10倍のレバレッジをかけられるため、少額の証拠金で大きなポジションを取れる半面、損失も同じ割合で膨らむリスクがある。
市場では、上場前に売買される無期限先物が、将来の企業価値に対する投資家の期待を先取りして織り込む価格発見の役割を果たしているとの見方も出ている。
投資会社Theoの最高投資責任者(CIO)、イギー・イオフェ氏は「無期限先物の価格は最終的には原資産の価格に近づく」としたうえで、「上場後も満期がないため、契約を継続して保有できる」と説明した。
実際、市場価格は公式の公募価格と大きく乖離した。Hyperliquidで取引されたCXMT無期限先物は1株当たり約6.35ドルで売買され、一時8.60ドルまで上昇した。これを基に算出した企業価値は約4250億ドルに達し、中国工商銀行(ICBC)の時価総額を上回る水準に評価された。
これに対し、CXMTの公募価格は1株当たり8.66人民元に決まり、これを基にした企業価値は約5790億人民元だった。海外投資家がIPOに直接参加できないなか、暗号資産取引所では公募価格とは別の価格帯が先に形成された格好だ。
業界では今回の動きについて、暗号資産デリバティブがデジタル資産の枠を超え、伝統的な金融市場でも価格発見の一翼を担い始めたことを示す事例だとの見方が出ている。SpaceXやOpenAI関連のデリバティブが上場前の投資手段として使われた流れに続き、中国本土市場の投資規制と海外の投資需要が重なったことで、暗号資産市場が新たな投資ルートとして機能しているとの分析もある。