Appleが中国のDRAMメーカー、長鑫存儲技術(CXMT)を新たな調達先として検討している。ただ、CXMTはすでに生産能力の大半を使い切っており、Appleが同社を活用して既存サプライヤーとの交渉力を高める効果は限定的との見方が出ている。
ITmediaが27日(現地時間)に報じたところによると、CXMTの2024年時点の月間DRAMウエハー生産量は10万枚を超え、既存工場はほぼフル稼働の水準に達した。
市場の関心は、AppleによるCXMT活用がメモリ調達の力学にどこまで影響を与えるかにある。CXMTを調達先候補に加える動きは、既存取引先へのけん制材料と受け止められる一方、実際に引き出せる追加供給量は限られる可能性がある。
その背景には、CXMTがすでに大規模な量産体制を築いていることがある。同社は中国政府の支援を受けながら生産規模を拡大してきた。
CXMTは、中国の半導体自立政策「MIC2025」の流れの中で成長した企業とされる。中国中央政府と福建省の支援を受けた福建晋華集成電路(JHICC)と、Tsinghua UniGroup傘下の西安UniIC Semiconductorに近い枠組みから事業が立ち上がったとされる。
もっとも、CXMTとTsinghua UniGroupの間に資本関係はなく、発足当初から事業構造は複雑だったという。
事業化のペースは速かった。CXMTは300mm生産拠点を整備し、2017年末に装置搬入を開始。2018年半ばには量産テストに移行した。初期製品は19nmプロセスの8GB LPDDR4だった。
当時、UniICではすでにDDR3の量産が進んでいたため、同一製品を重ねるよりLPDDR4を選択したとみられる。
CXMTは2019年に量産出荷を始め、当時の月間DRAMウエハー生産量は約2万枚だった。2020年には月4万枚への拡大計画も取り沙汰されたが、実際にはその水準には届かなかった。その後はLPDDR4に加えDDR4の生産も始め、生産量を増やしていった。
増産はその後も続き、2022年に月5万枚、2023年に7万5000枚超、2024年には10万枚超まで拡大した。2024年の年間DRAMウエハー出荷量は162万枚と集計された。
この結果、CXMTはWinbondとNanyaを上回り、世界4位、シェア5%水準に達したという。
こうした規模感は、Appleの調達戦略を見極める上でも重要だ。CXMTが2017年に整備した工場の目標生産能力は月12万5000枚とされる。2024年に月産10万枚を超えたことは、既存設備の余力が大きくは残っていないことを示す。
このため、AppleがCXMTを新規調達先として活用したとしても、短期的に追加調達量を大幅に積み増し、既存メモリメーカーへの交渉圧力につなげるのは容易ではない可能性がある。
中国メモリ産業の成長の背景も明確だ。CXMTは民間企業の自力成長というより、中国の半導体自給プロジェクトの中で資金と生産基盤を確保してきたケースに近い。
JHICCは中国中央政府と福建省の出資で設立され、CXMTもその延長線上で発足したとされる。こうした点は、サプライチェーンを評価する上で無視しにくい要素となる。
一方、Tsinghua UniGroupはかつて独自にDRAM事業を進めていたが、2021年7月に経営危機に陥り、Ziguangxin Holdingsの投資を受けて再建した。
この過程でDRAM事業はUniIC Semiconductorに集約され、Tsinghua UniGroup本体はDRAM事業から撤退した。それでもCXMTが増産を続けたことは、同社が試験段階のプレーヤーではなく、一定の供給力を持つメーカーとして定着したことを示している。
結局のところ、注目すべきなのはAppleの接近そのものではなく、CXMTの足元の生産余力とサプライチェーン上の位置付けだ。CXMTはすでに台湾勢を上回る出荷規模を確保しており、既存拠点もほぼフル稼働にある。
AppleによるCXMT活用は調達先の多様化という意味では意義がある。ただ、既存サプライヤーをけん制する交渉カードとしてみた場合、その効果は限定的にとどまる可能性が高い。