韓国のNPU(Neural Processing Unit)ベンダーが、国内クラウド事業者との連携を足場にAI推論市場の開拓を急いでいる。NVIDIA中心の市場構造のなかで、実際の導入需要をどこまで取り込めるかが焦点だ。
Samsung SDSは、FuriosaAIの第2世代NPU「RNGD(Renegade)」をベースにしたNPUaaS(NPU as a Service)を、SCP(Samsung Cloud Platform)で提供開始した。
同社によると、RNGDはAI推論に特化した韓国製NPUで、生成AIの応答生成や文書分析、画像判別といった処理での活用を想定する。推論用途では、GPUに比べて電力効率やコスト競争力に強みがあるとしている。
Rebellionsも、KT CloudやGabiaなど韓国内のクラウド事業者と連携し、NPUベースのサービス展開を広げている。推論向け半導体の商用化を急ぐ各社にとって、クラウドを通じた供給は顧客接点の拡大につながる重要な手段となっている。
一方で、韓国市場を狙う海外AI企業の動きも活発だ。AIワークスペースを手がけるGenspark.aiは、韓国参入を正式表明し、今後3年間で1億ドル(約150億円)を投資する計画を示した。まずはB2C向けのマーケティング体制を立ち上げ、その後B2Bへも広げる方針だ。
同社はあわせて、「AI Workspace 6.0」も公開した。電子メールや文書、会議、業務アプリケーションに分散する業務コンテキストを蓄積し、AIエージェントが実務で活用できるようにするという。動画生成AIを巡る競争が激しくなるなか、中国のKling AIも韓国展開を急いでいる。
NVIDIAと韓国主要企業の協業も広がっている。サンフランシスコで開かれたAIサミットでは、韓国の半導体・テック企業とNVIDIAが幅広い分野で協力を強化するとの発表が相次いだ。
米テック業界では、オープンソース、あるいはオープンウエートのAIモデルを支持する動きも広がる。NVIDIA、Microsoft、Meta、Palantirなど20社超の米テック企業は、オープンウエートのAIモデルに対して性急な規制を導入しないよう政策当局に求めた。
企業のAI導入や提携も相次いでいる。Samsung SDSはAnthropicと、エンタープライズAI市場の拡大を柱とする戦略的提携を締結した。両社の技術力と産業ノウハウを組み合わせ、韓国市場での企業向けAI事業を強化する考えだ。
The ZON Bizonは開発組織を中心に、AnthropicのAIモデル「Claude」を全面導入した。AI・クラウド企業のMegazoneCloudは、グローバル再保険会社Korean Reinsurance(Korean Re)と、再保険事業のAX(AI転換)加速に向けた戦略的業務協約(MOU)を結んだ。
URACLEは、AIコーディング支援ツール「Athena Code Assistant」のCLI(Command Line Interface)版を発売した。マルチモーダルデータプラットフォームとAIを手がけるMiso Information Technologyは、オープンソース生成AIアプリ開発基盤「Dify」の開発元LangGeniusと、サービスパートナーシップおよび戦略的業務協約を締結した。
構造化データ向け基盤モデル(TFM、Tabular Foundation Model)を開発するNums AIは、40億ウォンのシード投資を調達した。
このほか、Samsung ElectronicsがフランスのAIスタートアップMistralへの数億ユーロ規模の出資を協議しているとの報道も出ている。Mistral AIはMicrosoftと数十億ドル規模の契約を結び、欧州でコンピューティングインフラを拡充する。
OpenAIは、ChatGPTのデスクトップアプリに音声機能を追加した。Anthropicは新モデル「Claude Opus 5」を公開し、既存モデル「Claude Fable 5」と比べてコーディングや知識労働の評価を高めつつ、価格は半額水準に抑えたとしている。
Anthropicはあわせて、Claudeの音声モードでOpus、Sonnet、Haikuを選択できるようにしたほか、AMDと数十億ドル規模の契約を結び、最大2ギガワット規模のGPU容量を確保した。
Metaは、大規模言語モデル「Muse Spark 1.1」をMeta AIチャットボットに適用し、一般提供を開始した。社内のAI製品・ツールのインキュベーター組織「AAI Labs」では、OpenRouter対抗となるサービスを開発しているとの見方もある。
AIコーディングのスタートアップCognitionは、The Interaction Company of Californiaが運営するテキストベースのAIアシスタント「Pork」を買収した。Cognitionは、今回の買収を通じて自社のAIコーディングツール「Devin」を単なるソフトウェアではなく、より協働型のコーディングエージェントへ進化させる考えを示した。
決済企業Stripeが、AIモデル接続のスタートアップOpenRouterを約100億ドル(約1兆5000億円)で買収する案を協議しているとの報道もある。Runwayは、生成メディアモデルを自動選択する「Runway Media Router」を発表した。同社は、AI動画スタートアップから生成メディアのインフラ企業へと事業の軸足を移しつつある。
音声AI企業ElevenLabsは、AI音楽生成サービス「ElevenMusic」を更新した。AIコーディングのスタートアップPoolsideは、コーディングエージェント向けのオープンウエート基盤モデル「Laguna S 2.1」を公開。Adobeは、iOS向け実験カメラアプリ「Project Indigo」に、AIによる写真評価と編集提案機能を追加した。
AIが複数企業で広く使える汎用技術へと近づくなか、グローバルAI市場を主導してきたOpenAIとAnthropicの競争優位が以前ほど強くないのではないかとの見方も出ている。
先端AI開発の知見が広がり、多くの企業がOpenAIやAnthropicより低コストで実用的なAIを提供できるようになれば、両社が築いてきた競争優位や参入障壁、いわゆるMoatが弱まる可能性があるためだ。