パロディーサイト「OverpAId」が公開され、話題を集めている。生成AIの導入が広がるなか、現場の従業員ではなくCEOこそAIで代替できるのではないか――。そんな皮肉を通じて、経営陣の高額報酬や企業内の利益配分に問題を投げかける内容だ。
米オンラインメディアのGIGAZINEが24日(現地時間)に報じた。
OverpAIdのトップページでは、CEOの報酬とAI導入コストを直接比較している。「あなたのCEO人件費は年間2200万ドル」としたうえで、自社の「AI CEO」は1回4699ドルで利用できるとうたう。戦略立案やビジョン提示、従業員の意欲を高めるメールの作成といったCEOの業務を、より低コストかつ効率的に担えるという設定だ。
もっとも、狙いは実在の製品を売り込むことではない。サイトは、米S&P500企業のCEOの平均総報酬が1890万ドルに上り、大手上場企業ではCEOと従業員の報酬比率が290対1に達すると指摘する。過去40年間で大企業CEOの報酬は1000%超増えた一方、企業の成長を支えてきた従業員の賃金上昇は限定的だったと訴えている。
こうした問題提起は、企業のAI導入の進め方にも重なる。技術、小売、メディア、物流、金融など幅広い業界で、AI導入に伴って中間管理職や一般従業員の削減が進む一方、削減で生まれた資金はデータセンター建設やエージェント型AIのライセンス費用に振り向けられている。にもかかわらず、経営陣の報酬は維持されるか、むしろ増えているという構図を示している。
サイトは、AIが苦手な仕事と得意な仕事を対比することで、現場の人材にしか担えない役割も浮かび上がらせる。AIには難しい例として、看護師が患者のわずかな容体変化を見抜くこと、エンジニアが深夜の障害に対応すること、教員が教室内の微妙な異変を察知することを挙げた。
一方、AIが得意な例としては、他人が作成した報告書を会議で読み上げること、3週間前にチームが下した決定を追認すること、成果に関係なく自らの報酬を引き上げることなどを列挙し、CEO像を痛烈に風刺している。
サイト下部には、CEO報酬と従業員数を入力すると、CEOを解任した場合に従業員1人当たりいくらの追加ボーナスを支給できるかを試算するツールもある。従業員500人、年俸2200万ドルのCEOを想定した場合、1人当たり4万3990ドルを配れる計算になるという。さらにAIであれば、即時に意思決定でき、競合他社へ転職することもなく、専用機や高級ホテルも不要だと皮肉る。
その一方で、サイト最下部にはOverpAIdが実在の製品ではないことも明記している。経営陣が実際に生み出す価値と過大な報酬との不均衡に加え、富裕層への報酬が下層へ波及するという、いわゆるトリクルダウンの限界を風刺する目的で制作したと説明している。
今回のサイトは、AIが誰の雇用を先に置き換えているのか、そしてコスト削減の果実が組織内でどう配分されているのかを問い直す試みといえる。人員削減とAI投資の拡大が同時に進むなか、OverpAIdはCEO報酬と企業のコスト削減論理を正面から突いている。