Microsoftでエージェント型セキュリティを担当する副社長のキム・テス氏は24日、ソウル・COEXで開かれた国際ハッキング防御大会・セキュリティカンファレンス「CodeGate 2026」で講演し、AIによる脆弱性の検出と修正はすでに実用段階にあるとの認識を示した。単一のAIモデルに頼るのではなく、複数のモデルやエージェントを組み合わせる設計が、成果を大きく左右すると強調した。
キム氏は「AIでバグを見つけて修正するセキュリティ自動化は、もはや遠い未来の技術ではない。今すぐ活用できる現実だ」と述べた。そのうえで、「複数のAIモデルを組み合わせることで、脆弱性をより効果的に発見し、修正できる」と語った。
同氏は、LLMについて「非常に高い能力を示す一方で、基本的なミスも犯し得る」と指摘した。「どの課題をAIに任せ、どこを人が判断するのかを切り分けることが活用の核心だ」とも述べた。
また、AIエージェントを活用したセキュリティ研究の潮流が、プロンプトエンジニアリング中心からシステム設計中心へ移っている点にも言及した。
初期には、段階的な推論を促すChain of Thoughtや、例を与えて応答を導くFew-shotといった手法への依存が大きかったが、現在は複数エージェントをどう組み合わせるかというアーキテクチャ設計が性能を左右するという。
キム氏は、自身が参加した米国防高等研究計画局(DARPA)のAI Cyber Challenge(AIxCC)での経験に加え、Microsoftが進めるMDASHプロジェクトについても紹介した。
AIxCCでは、単一モデルではなく複数のエージェントを同時に動かし、その結果を統合する方式を採用したという。同氏は、1つのモデルだけを使う場合に比べ、複数モデルを併用した方がバグ検出の性能は高かったと説明した。
システムは大きく2つのワークフローで構成した。1つは、プログラムの実行中に発生するクラッシュを分析して原因を特定する流れ、もう1つは、その結果を基にパッチを生成する流れだ。
メインエージェントが問いを細分化し、サブエージェントに委任する構造も取り入れた。キム氏は「チームごとに静的解析ツールを使ったかどうか、またエージェントに与えるコンテキストをどう構成したかが、成果を分ける要因だった」と述べた。既存の解析ツールをAIと組み合わせるのか、AIだけで脆弱性を探索するのか、さらにどの程度の参考情報を与えるのかによっても、結果は大きく変わったという。
大会終了後、同チームは開発したシステムをオープンソースとして公開し、ベンチマークもあわせて公表した。
キム氏は、AIxCCで得た知見をMicrosoftでの製品化にも生かしたと説明した。その成果が、6月の開発者会議「Build」で公開したMDASHだという。
MDASHは、侵入テスターによる脆弱性探索のプロセスを再現したシステムだ。コードリポジトリの変更履歴や過去の脆弱性記録を分析し、その情報を基に脆弱性を探す。
検出にとどまらず、見つかった脆弱性ごとに開発者レビューに近い手順で検証を進める。そのうえでパッチを自動生成し、生成したパッチが正しく機能するかどうかを確認するテストまで支援する。
キム氏は、MDASHの初期活用事例として、MicrosoftのWindowsカーネル・ファジングチームを挙げた。ファジングは、異常な入力値を大量に与えることでエラーや脆弱性を見つけるセキュリティテスト手法だ。
同氏によると、Microsoftのチームは、長期間ファジングを続けても見つけられなかった脆弱性をMDASHで発見したという。「MDASHが報告した脆弱性を開発者が精査した結果、その90%以上が有効な脆弱性だと確認された」と述べた。
MDASHのベンチマーク評価にも触れ、「比較的性能の低いモデルでも、中級レベルのセキュリティ研究能力を示した。より高性能なモデルを適用すると、成功率は98%に達した」と説明した。そのうえで、「モデル性能が高まるほど、それを支えるインフラ設計の重要性も増す」と強調した。