AI投資の過熱感を巡って「バブル論」が広がるなか、メモリ大手ADATAのチョンリバイ会長は、メモリ不足が今後10年にわたって続く可能性があるとの見方を示した。AI需要はデータセンターにとどまらず、ロボットや自動運転車、スマートホームなどにも広がっており、供給が需要に追いつきにくい状況が長期化するという。
米TechRadarによると、チョンリバイ会長は7月23日(現地時間)、TSMCの決算発表後に市場で浮上したAIバブル論について、「本当にバブルを論じるなら2030年以降だ」と述べ、足元で懸念を強めるのは早計だとの認識を示した。
同氏は、AIの計算能力やメモリチップ、電力に対する需要が依然として市場予想を上回っていると分析した。Metaが余剰のAI計算資源を外部に貸し出す方針を示したことで、クラウド事業者の過剰投資を懸念する声も出ているが、これをAI市場全体の減速シグナルと受け止めるべきではないとした。
また、一部企業の設備投資額や工場稼働率だけでAI産業全体を判断するのは、限られた視野で空を見上げるようなものだと指摘。企業向け、政府向け、消費者向けのサービスに加え、AI活用はさまざまな産業エコシステムへ同時並行で広がっていくと説明した。
メモリの供給不足も簡単には解消しないとみている。Samsung ElectronicsやSK hynix、Micronなど主要各社が生産能力の増強を進める一方で、同氏は今後10年で最も不足する資源としてクリーン電力とメモリを挙げた。AI需要の伸びが供給拡大のペースを上回るとの見立てだ。
こうした見方は、足元のメモリ価格にも表れている。市場調査会社3Dcenterによると、ドイツ市場におけるDDR5メモリキットの価格は7月だけで7%上昇し、過去最高を更新した。平均価格は前年同月比で448%上昇し、1年で4倍超に膨らんだ。
同氏は、AIデータセンターに加え、ロボット、自動運転車、無人工場、無人店舗、スマートホーム、低軌道衛星、さらに関連する地上インフラでも新たなメモリ需要が急増すると見込む。主要メモリ各社に中国勢を加えても、今後10年以内にこうした需要を満たすのは難しいとの見方を示した。
このため、メモリ各社の増設戦略も従来とは変わる可能性がある。一気に大規模増産へ踏み切るのではなく、需要を見極めながら段階的に投資する手法が定着するとの分析だ。
業界では、AI需要が中央集約型のデータセンターを超え、多様な物理デバイスやインフラへ広がるほど、メモリ不足が一時的な景気循環ではなく、構造的な現象として続く可能性に注目が集まっている。
消費者やPCメーカーの負担もしばらく続きそうだ。AIインフラ投資と新型デバイス需要が同時に拡大するなか、メモリ価格が短期間で安定する可能性は低く、需給動向が今後の半導体市場を左右する重要な要因になりそうだ。