HuaweiとZTE

欧州連合(EU)がHuaweiやZTEなど中国系ベンダーの通信機器を域内ネットワークから排除する方向で制度整備を進めるなか、欧州の通信事業者が負担する置き換え費用は最大400億ユーロ(約6兆8000億円)に上る可能性があることが分かった。中国勢が市場から退出した場合、供給先は実質的にEricssonとNokiaへ集約され、機器価格の上昇や通信インフラ投資の遅れを招くとの懸念も出ている。

23日付のCryptopolitanによると、GSMA Intelligenceは、EUが高リスク供給業者の機器撤去を義務付けた場合、欧州の通信事業者に最大400億ユーロのコストが発生し得るとする報告書を公表した。報告書は、Deutsche Telekom、Vodafone、Orangeなど欧州の主要通信事業者7社の依頼で作成された。

今回の試算は、欧州委員会がこれまで示してきた100億〜130億ユーロの推計を3倍超上回る。従来の試算がモバイルネットワークの置き換え費用に限定されていたのに対し、今回の分析では伝送網や有線ブロードバンド設備も対象に含めた。

内訳は、モバイル基地局関連設備の置き換えに160億〜220億ユーロ、基地局間を結ぶ伝送網設備に90億〜120億ユーロ、有線ブロードバンド設備に約50億ユーロを見込む。

EUはサイバーセキュリティ法の改正を通じ、HuaweiやZTEのような高リスク供給業者の機器を加盟国の通信網から撤去する案を進めている。報告書は、この措置が欧州の通信業界にとって数十年ぶりの大規模な構造変化になり得ると指摘した。

中国系ベンダーが市場から退出した場合、代替供給業者は事実上EricssonとNokiaに限られ、競争低下と価格上昇は避けにくいとの見方を示した。

試算では、中国系ベンダーが排除された場合、モバイル通信機器の価格は平均24%、有線ブロードバンド機器は19%、伝送網機器は約10%上昇する可能性がある。HuaweiとZTEの供給分が特定企業に集中するケースでは、モバイル機器の上昇率が最大43%に達する可能性もある。この場合、追加の投資負担は2027〜2030年で約85億ユーロ、2035年まででは約240億ユーロに膨らむとみている。

現在、HuaweiはEUのモバイル通信機器市場で約25%のシェアを持ち、ZTEを含めると両社で約3分の1を占める。有線ネットワーク市場でも、両社の合計シェアは約40%に達する。

両社が撤退した場合、モバイル通信機器市場ではEricssonのシェアが約60%まで上昇し、EricssonとNokiaの合計シェアは約96%に達する見通しだ。Nokiaの有線ブロードバンド市場シェアも、現在の約30%から50%前後まで拡大する可能性があるとしている。

報告書は、置き換え費用の増加が通信事業者によるネットワーク高度化投資の先送りや縮小につながる恐れがあると警告した。約2050億ユーロ規模とされる欧州のデジタルインフラ投資ギャップが、さらに拡大する可能性があるという。

政策対応を巡っては、加盟国間の温度差も続いている。ドイツとスペインは、EUが一律に中国製機器を排除すれば、中国の報復措置を招くだけでなく、人工知能(AI)インフラの整備コストを押し上げる恐れがあると懸念している。中国外交部も、中国企業が差別的な扱いを受けた場合には、関連規定に基づいて正当な権益を守る措置を講じると警告した。

ドイツ政府は、安全保障と産業競争力の両立が重要だとの立場を示している。カテリーナ・ライヘ独経済相は、中国の不公正競争には対応が必要だとしつつ、ドイツ企業の対中輸出も継続的に保障すべきだと述べた。

業界では、EUによる中国製通信機器の排除がサプライチェーン再編や通信インフラ投資、AIインフラ整備コストにまで波及する可能性があるとして、今後の加盟国間の調整が制度の実効性を左右するとの見方が出ている。

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