写真=BitMEX

暗号資産デリバティブ取引所BitMEXは、9月23日(現地時間)をもって運営を終了する。運営会社のHDR Global Tradingは、市場環境と事業戦略を見直した結果、取引所の閉鎖を決めた。8月26日からは新規ポジションの建玉を停止し、終了時点で残る未決済ポジションは強制清算する。

海外メディアのU.TodayやCryptopolitanなどによると、BitMEXは告知当日に新規アカウント登録の受け付けを停止した。8月26日以降はリスク上限を適用し、新規建玉は認めず、既存ポジションの縮小のみ受け付ける。

BitMEXは、期限までにポジションを解消しなかったことによる損失は補償しないとしている。一方、運営終了後もアカウントへのログインは可能で、残高や取引履歴の確認、残存資金の出金には対応する。ステーキングされていた独自トークン「BMEX」もすべてアンステーキングされ、利用者のアカウントに返還された。

本人確認(KYC)を完了した利用者が運営終了後も資産を残した場合は、月額50ドル、または年率1%相当のいずれか高い方の手数料を課す。手数料は毎月差し引かれ、資産が残り続ければ累積する可能性がある。

同社は、優先出金サービスは提供しないとしたうえで、閉鎖手続きを悪用した犯罪に注意するよう呼びかけた。あわせて、顧客資産への対応に十分な準備金を確保しているとして、準備金証明の資料も公開した。CoinMarketCapの集計では、BitMEXの総資産は約10億ドル(約1500億円)とされる。

BitMEXは2025年2月、投資銀行BroadHaven Capital Partnersを起用して売却先を探ったが、買い手は見つからなかった。その後、2026年6月末にはステファン・ルッツ最高経営責任者(CEO)、イナ・シュタイナー最高財務責任者(CFO)、ラファエル・ポランスキ最高成長責任者(CGO)が退任。グローバル総括法務顧問兼最高執行責任者(COO)を務めていたピーター・ウィルキンソンがCEOに就任した。

BitMEXは2014年、アーサー・ヘイズ、ベン・デロ、サミュエル・リードの3氏が設立した。2016年には最大100倍レバレッジのビットコイン無期限先物を投入し、暗号資産デリバティブ市場の拡大をけん引した。

その後、BinanceやBybit、OKX、Deribitなどの主要取引所も無期限先物を相次いで導入し、この商品は暗号資産市場を代表するデリバティブとして定着した。BitMEXは高い取引高を背景に、2019年ごろには世界の暗号資産先物の未決済建玉の約50%を占めるまで存在感を高めた。

ただ、2020年に入ると米規制当局による摘発と訴追が本格化し、支配力は急速に低下した。米商品先物取引委員会(CFTC)は、BitMEXが米国で違法に商品デリバティブを提供し、適切なマネーロンダリング対策(AML)体制を整備していなかったと判断。米司法省(DOJ)も共同創業者らを銀行秘密法違反の容疑で起訴し、共同創業者は起訴直後に経営の第一線を退いた。

BitMEXはその後、規制対応を強化したものの、デリバティブ市場で主導権を取り戻すことはできなかった。この間にBinanceやBybit、OKXなどがシェアを急速に拡大した。

運営終了を巡っては、Binance創業者のチャンポン・ジャオ氏(CZ)も反応した。ジャオ氏は、BitMEXが暗号資産市場で100倍レバレッジの無期限先物を切り開いた取引所だとして、アーサー・ヘイズ氏に敬意を表明。「BitMEXがなくなるのは残念だ」と惜しんだうえで、前政権下の「暗号資産との戦い」に耐え切れなかったとの見方も示した。

一時は暗号資産デリバティブ市場を主導したBitMEXだが、規制圧力と競争激化の中で影響力を失い、設立から11年で市場を去る。100倍レバレッジの無期限先物を広く定着させた功績は、運営終了後も業界で語り継がれそうだ。

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