TeslaのFSD(写真=Shutterstock)

Teslaは、ハードウェア3(HW3)搭載車の完全自動運転支援システム「FSD」への対応を巡り、具体策をなお示していない。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はHW3車のアップグレードの必要性を認めたが、実施時期や方式、費用負担については明言を避けた。

米電気自動車メディアのElectrekが23日(現地時間)に報じた。マスク氏は2026年4〜6月期の決算説明会で、HW3車のアップグレード計画について問われ、「HW4未満の車両をアップグレードするのは理にかなっている」と述べた。

質問したのはTruistのアナリスト、ウィル・スタイン氏。HW3車でFSD v15以降を動かすため、ハードウェアの更新を継続する考えがあるのかをただした。これに対しマスク氏は、HW3車のアップグレードは将来的に採算面でも合理的になり得るとの認識を示した一方、いつ、どのような形で実施するのか、費用をTeslaがどこまで負担するのかには触れなかった。

アップグレードの手法自体も固まっていない。マスク氏は、既存のHW3車を単純にHW4へ置き換えるのではなく、次世代AIボードを適用する案も検討していると明らかにした。HW4を改良した次期チップについては来年半ばの生産開始の可能性に言及し、次世代のAI5チップは来年後半の量産を目標にしていると説明した。

もっとも、初期生産分はヒューマノイドロボット「Optimus」に優先投入する予定だという。

このため、HW3車のアップグレードに使う次世代チップは、現時点ではまだ量産段階に入っていないことになる。仮に生産が始まっても、車両よりOptimusが優先されるため、HW3車向け支援はさらに後ずれする可能性がある。

HW3を巡る問題は、Teslaが過去に掲げてきた「完全自動運転に対応する車両」という説明にも関わる。Teslaは2016年以降に生産する全車両について、完全自動運転に必要なハードウェアを備えるとうたい、FSDを最大1万5000ドルで販売してきた。

ただ、その後マスク氏は、HW3では無監視の完全自動運転を実現するには性能が不足していると認めた。HW3のメモリ帯域幅はHW4の8分の1にとどまるとも説明している。

Teslaは昨年7〜9月期の株主向け書簡でも、「全車両が自動運転ハードウェアを備える」としていた従来の表現を修正した。米国、中国、オーストラリアなどで提起された集団訴訟を意識した対応との見方も出ている。現在はHW3車に対し、機能を一部制限したFSD v14のライト版を提供しており、ハードウェア上の制約を踏まえた暫定対応と受け止められている。

実際のアップグレード作業も容易ではない。HW3搭載車は数百万台規模に上るため、既存のサービスセンターだけでコンピューター交換を処理するのは難しい。マスク氏は今年初め、HW3改修専用の「マイクロファクトリー」を整備する可能性にも言及し、既存のサービス網だけでは対応が難しいとの認識を示していたが、今回の決算説明会ではこの計画を含む具体策は示されなかった。

その結果、HW3支援の問題は単なる技術更新にとどまらず、製品戦略や顧客補償にも関わる課題として残った。販売時の説明と現在の技術的制約の隔たりをどう埋めるのかが、Teslaの信頼を左右する焦点になっている。

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