HudsonAIは、Kコンテンツの海外展開における言語・文化の壁に対し、AI翻訳と音声合成を組み合わせた吹き替え技術で対応する。シン・ヒョンジン代表は、字幕視聴が定着していない市場では母語での吹き替え需要が強く、AIの活用によってローカライズ費用を従来の半分以下に抑え、制作期間も短縮できると説明した。
「韓国コンテンツの競争力はすでに十分に高い。課題は、海外の視聴者が作品を見つけても、言語が障壁となって離脱してしまう点にある」
シン代表はインタビューでこう述べ、Kコンテンツ輸出の主なボトルネックとして言語と文化の違いを挙げた。コンテンツそのものの競争力が高くても、字幕視聴に慣れていない視聴者や、母語での吹き替えを好む層には届きにくいという。
HudsonAIは、AIベースの翻訳と音声合成を活用し、映像コンテンツを80超の言語にローカライズする企業。対象は映画やドラマにとどまらず、スポーツやキッズ向けコンテンツにも広がっている。
シン代表は、吹き替え需要が大きい市場として南米と西欧を挙げた。韓国では字幕での視聴が一般的だが、海外では母語音声を好む視聴者が多いという。特に子どもが主な視聴者となるキッズ向けコンテンツでは、吹き替えは事実上欠かせないとした。
同氏は「韓国国内では字幕だけでも消費されるが、海外では吹き替えの有無が視聴実績を大きく左右する」と指摘。「優れたコンテンツを持っていても、ローカライズ費用が障壁となり、海外展開に踏み切れないケースは少なくない」と述べた。
こうした需要を押し上げているのが、広告型無料ストリーミングテレビ(FAST)市場の拡大だ。FASTでは大量のコンテンツを複数の国・地域に継続供給する必要があるが、従来型の吹き替えでは対応言語が増えるほど、翻訳、収録、品質チェックのコストが膨らむ。
シン代表は「FASTは作品ごとの収益性がサブスクリプション型の動画配信サービス(OTT)より低く、従来の吹き替えコストをそのまま負担するのは難しい」と説明する。「複数国に展開するには、AIで現地化コストを引き下げる必要がある」と話した。
HudsonAIは、映像内の話者をAIで識別し、台詞を翻訳したうえで、役柄に合った音声を生成する。この手法により、従来の吹き替え制作費を少なくとも半分以下に抑え、制作期間も短縮できるとしている。
もっとも、AIが吹き替え工程のすべてを完全に置き換えるのは難しい。キャラクターの感情表現や場面ごとの文脈、現地文化に即した言い回しなどは、人の手による確認が必要になるためだ。
同社は、自動化の水準を高めながら品質を維持する仕組みとして、「エージェント・ローカライゼーション」を開発している。翻訳、音声生成、品質検収を担う複数のAIエージェントが連携し、各工程で誤りを点検・補完する方式だ。反復作業はAIが担い、最終的な品質や文化的な文脈は専門家が確認する。
AIによるローカライズ需要は、映画やドラマにとどまらない。企業の製品紹介動画、教育コンテンツ、広報映像へと用途が広がっており、HudsonAIは企業が保有する映像を多言語字幕と音声に変換するローカライズソリューションも提供している。
シン代表は「コンテンツのジャンルや活用目的に応じて、AIの適用方法も変えるべきだ」と述べた。「FASTやスポーツ、キッズ向けに加え、企業映像でもコストと制作時間を抑えたいという需要が強まっている」としている。
K-FASTにおける海外流通モデルを検証
HudsonAIは、科学技術情報通信部が推進する「グローバルK-FASTアライアンス」に、技術企業の主管社として参画している。韓国コンテンツを海外のFASTチャンネルに供給できるよう、各国の言語・文化に合わせた吹き替えを行い、ローカライズ済みコンテンツを継続的に確保する役割を担う。
狙いは、個別作品を1~2本翻訳するのではなく、FASTチャンネルの運営に必要な大量のコンテンツを複数言語で継続的に制作できる体制を整えることだ。FASTは国別にチャンネルを分け、24時間編成を維持する必要があるため、進出先ごとに十分なローカライズ済みコンテンツを確保しなければならない。
シン代表は「FASTでは国別チャンネルに継続してコンテンツを供給する必要があり、現地化のスピードとコストが事業性を左右する」と指摘。「今回の事業では、AI吹き替えが実際の海外視聴や流通実績につながるかを示すことが重要だ」と述べた。
一方で、事業成果をチャンネル開設数だけで判断すべきではないとの見方も示した。技術企業がローカライズを担っても、最終的な成果はプラットフォーム側の編成、マーケティング、現地での流通力に左右されるためだ。
同氏は「成果はチャンネル数ではなく、実際の視聴量とコンテンツ流通実績で評価すべきだ」と強調した。そのうえで「政府支援も技術開発にとどまらず、コンテンツ企業やプラットフォームがAIローカライズサービスを実際に導入・活用する初期需要の創出につなげる必要がある」と語った。