写真=Mobigenのオム・テドクCTO

Mobigenが、オンツロジーを軸にした「オンツロジー・ファースト」戦略でエンタープライズAI市場の開拓を加速する。LLMはオープンソースを活用し、自社ではオンツロジー基盤の強化に集中する方針だ。米Palantirをベンチマークに、より低コストな選択肢としてポジション確立を目指す。

Mobigenのオム・テドクCTOは最近のインタビューで、「ChatGPTのようなAIが企業で活用されるには、組織内のデータと接続される必要がある。そこで中核的な役割を果たすのがオンツロジーだ」と述べた。そのうえで、Palantirより安価な代替となることで、「韓国版Palantir」と呼べる企業へ成長したいとの考えを示した。

同社は2025年から、オンツロジー中心のAI戦略を本格展開している。LLM分野は競争が激しく、多額の投資を要することから、自社で基盤モデルの競争に踏み込むよりも、企業がAIを実務で活用するための支援技術に注力する判断を下したという。

その一環として、Palantirを参考に2025年にAIプラットフォーム「Graphio」を投入した。足元では1.0の安定化を踏まえて「Graphio 2.0」を公開しており、2027年には3.0の展開も予定する。

オンツロジーは、組織内に分散するデータを関係性ベースで結び付ける考え方だ。登場から時間はたっているが、市場で期待されたほど普及してこなかった。概念自体は比較的理解しやすい一方、実務に落とし込むにはツール整備やデータ連携の負担が大きかったためだ。

実際、オンツロジーを導入しても、それだけですぐ成果が出るわけではない。既存データとのパイプライン構築に加え、業務に応じたエージェント整備も必要になる。こうした導入コストと時間の壁を下げたことが、Palantirの成長要因の一つだと同社はみている。

とりわけ、ChatGPTに代表されるLLMの登場後は、エンタープライズ市場におけるPalantirの存在感が一段と高まった。AIが理解できる形でデータ間の関係を提供する仕組みが、企業向けAIでの競争力につながったという見方だ。

Mobigenも基本的には同様のアプローチを採る。Graphioは、抽象的になりがちなオンツロジーの概念を、実務で使える形に落とし込んだプラットフォームという位置付けだ。

オムCTOによると、オンツロジー技術は単なるRAG用途にとどまらず、業務システムに近い性格を持つ。RAGがデータベース内の情報を意味ベースで参照する仕組みであるのに対し、オンツロジー基盤は既存の業務システムのようにデータ入力にも対応できるという。

Palantirのプラットフォームに一度データを入力すれば、関連する他のシステムにも反映できる。Palantirが自社ソリューションを「データOS」と位置付ける理由もそこにあると説明する。

オンツロジーと同様、リレーショナルDBも関係性を基盤とするが、従来のリレーショナルDBだけでは企業全体のデータを横断的に結び付けるのに限界があるとみる。オムCTOは「従来のリレーショナルDBはテーブル単位で関係がサイロ化しやすい。これに対し、Palantirのようなオンツロジープラットフォームは、システム横断で関係性を中心にデータをつなぎ続けられる」と語った。

知識グラフとオンツロジーは似た概念として語られることが多いが、同氏は両者の違いも強調する。知識グラフは検索を起点に発展してきたのに対し、オンツロジーは人間の思考や概念構造を表現する文脈で登場した。推論を通じて、知識グラフよりも複雑な体系を扱える点が特徴だという。

MobigenはGraphioを通じて、企業がオンツロジーを実装する際の参入障壁を下げることを目標に掲げる。価格面でも、Palantirより導入しやすい選択肢となることを前面に打ち出す。

オムCTOは「オンツロジーを求める顧客は国内でもすでに多い。オンツロジーを盛り込んだ提案依頼書(RFP)も数多く出ている」と話す。あわせて「国防、EPC、公共、通信といった業種特化市場の攻略に注力する。FDE組織の育成も進めている」と述べた。

Mobigenが最近公開したGraphio 2.0は、データ、オンツロジー、アプリ、ガバナンス/コラボレーションの4層構造を採用する。中核となるオンツロジー層が分散データを結び付けてコンテキストを付与し、アプリ層ではそれを基盤にLLMと連携したり、エージェントを登録したりできる。

価格以外の差別化要素として、同社は非構造化データへの対応を相対的に重視している点も挙げる。オムCTOは「Palantirは構造化データをオンツロジーでつなぐところから始め、非構造化データへ広げている。一方、Mobigenは相対的に非構造化データを重視している。Graphio 3.0ではその比重をさらに高める」と説明した。

こうした方針の背景には、AIの普及によってIT環境が、入力に応じて結果が決まる決定論型システムから、確率的に応答する確率論型システムへと急速に移行するとの見立てがある。オムCTOは「最近のAIは言語ベースで、基本的に確率論的な特性を持つ。決定論と確率論的要素をどう組み合わせるかが重要であり、技術トレンドを見る限り、今後は確率論的要素の比重がさらに高まる」と語った。

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