妊娠中の母親のビタミンD不足が、胎児の骨の健康だけでなく、免疫系の形成や腸内細菌叢の発達にも影響を及ぼす可能性があることが分かった。妊娠初期の不足は胎盤形成や早産リスクにも関与するとされ、出生後の補給の重要性も改めて注目されている。
胎児は日光を浴びることができず、自らビタミンDを合成できない。そのため、母親の血中ビタミンD濃度が胎児の状態に直結する。
一方で、妊娠・授乳中の女性の4人に1人がビタミンD不足の状態にあるとの指摘もあり、妊娠期から授乳期にかけた継続的な管理が重要だ。
Good Bacteria Research Instituteの所長、キム・ソクジン氏は最近公開した動画で、母親の血中ビタミンD濃度が胎児や乳幼児の免疫形成に及ぼす影響と、日常での対応策を解説した。
同氏によると、妊娠初期に母親の血中ビタミンD濃度が低い場合、胎盤形成が妨げられ、炎症リスクが高まり、早産につながる可能性がある。
また、ビタミンDは免疫細胞のもとになる造血幹細胞のシグナル伝達にも関与するという。妊娠中に不足すると、免疫細胞の分化に関わるプログラムに影響が及び、成人後の免疫細胞の構成にも痕跡が残る可能性があるとした。
大規模研究でも、妊娠中にビタミンDを十分に摂取した母親の子どもでは、幼少期の喘息や反復性喘鳴の症状が減る傾向が確認されている。
ビタミンDは、出生時に母親から子どもへ受け継がれる腸内細菌の定着過程にも関わるとされる。2024年に公表されたコホート研究では、妊娠中にビタミンDが欠乏していた母親から生まれた乳児は、生後6カ月時点で腸内の有益菌の多様性が有意に低かった。
背景として、ビタミンDには腸粘膜の防御バリアを強化し、有益菌が定着しやすい環境を整える働きがあるとみられている。
出産後の母乳育児でも注意が必要だ。母乳はほぼ完全な栄養源とされる一方、ビタミンDの含有量は例外的に少なく、乳児の1日推奨量を満たしにくいという。
このため各国の小児科学会は、母乳栄養児に対し、出生直後から別途ビタミンDを補給するよう推奨している。母親が十分な量のビタミンDを摂取して母乳中の濃度を高める方法もあるが、補給の要否や用量は小児科の専門医と相談して決めるべきだとしている。
キム氏は「健康は遺伝子だけで決まるものではなく、親がつくる環境が受け継がれていく。その鍵の一つがビタミンDだ」と述べ、実践指針も示した。
妊娠を計画する段階から血中ビタミンD濃度を確認し、不足があれば産婦人科の専門医と相談した上でサプリメントを活用すべきだとした。出産後の授乳期も、母親自身の回復と母乳の質の維持に向け、適正な値を継続的に保つ必要があるという。
また、乳児と一緒に1日15〜20分ほど日光を浴びながら散歩する習慣も勧めた。サプリメントの摂取量や方法については、妊婦や乳児それぞれの状況を踏まえ、必ず医療スタッフと相談して決めるべきだと強調した。