DJI系の新興ブランドAvinoxが展開する新型モーター「M2S」を搭載したe-MTBが、最高速ではなく、自然なアシスト感や長く走り続けられる使い勝手で存在感を示している。米The Vergeは7月18日、同モーターを採用した「Amflow PL Carbon Pro」の試乗を通じ、e-MTBの価値は速さそのものよりも、疲労を抑えながら反復して走れる点にあると報じた。
The Vergeによると、M2Sは小型・軽量でありながら高出力を備えるのが特徴だ。評価の中心は出力の大きさそのものではなく、テクニカルな区間でも扱いやすく、走行のリズムを崩しにくい自然なアシスト性能にあるという。
単に速度を引き上げるのではなく、登坂や荒れた路面でも失速しにくくし、安定したペースを保ちやすくするのがM2Sの持ち味だとした。
記事では、e-MTBを巡る従来からの議論にも言及した。マウンテンバイク業界では、フルサスペンションやディスクブレーキ、ドロッパーポスト、29インチホイールといった新技術が登場するたびに、「簡単になりすぎる」との批判が繰り返されてきた。電動アシストモーターも同じ文脈で受け止められてきたという。
一方で実際の走行では、電動モーターは努力そのものを置き換えるというより、疲労を減らし、より多くのコースを繰り返し走れるようにする役割が大きいとThe Vergeは説明した。ターボモードで登りを楽にこなすことも、エコモードで心拍数を保ちながら運動量を確保することもでき、負荷はライダー次第だとしている。
もっとも、市場のイメージとは異なり、e-MTBが常に速いわけではない。欧州では、e-MTBはスロットルを備えないペダルアシスト方式に限られ、アシストは時速25kmで打ち切られる。連続出力も250W程度に抑えられる。
このため、平地や緩斜面では、一般の熟練ライダーが時速30km超で走るケースもあり、最高速度だけを見ればe-MTBが常に優位とは言えない。
差が出るのは、むしろ制御のしやすさだ。コーナー進入前に減速しすぎても立ち上がりで素早く再加速でき、荒れた路面でラインが乱れそうな場面でも、モーターのトルクが安定した推進力を生むという。
The Vergeは、M2Sの出力特性について、直感的で予測しやすいと評価した。これにより、バランスを崩したり、降車して押し歩きしたりする場面が減ったとしている。熟練ライダーと一緒に走る際も、序盤から大きく引き離されにくくなる点を挙げた。
性能面では、M2Sは最大150Nmのトルクと、瞬間最大1500Wのブースト出力に対応する。
M2Sを搭載するAmflow PL Carbon Proは、カーボンファイバー製フレームを採用し、重量は20.6kg。一般的なe-MTBの22〜27kgより軽量に仕上げた。ただ、こうした性能は約1万ドル(約150万円)の高価格帯モデルで実現しており、価格は普及に向けたネックとみられる。
Avinoxは現在、世界で60を超える自転車ブランドと協業していると明らかにした。M2S搭載モデルでは、約4000ドル(約60万円)の「Crussis e-Hard 11.11」ハードテイルが最も安価な例として挙げられている。
これより性能は抑えられるものの、Ride1UpやAventonなど、価格競争力を前面に打ち出すe-MTBも選択肢を広げている。
The Vergeは、e-MTBの競争力は最高速度ではなく、疲労を抑えながら、より長く、より頻繁に走れる体験にあると結論付けた。モーターが突然ライダーを上級者に変えるわけではないが、反復走行をしやすくし、結果として自転車に乗る時間そのものを増やすという。