韓国銀行は16日、政策金利を年2.50%から年2.75%に引き上げた。AI投資の拡大や半導体市況の改善を背景に、所得増が消費や内需の回復を通じて需要面からの物価押し上げ圧力につながると判断した。住宅価格の上昇や家計債務、為替変動といった金融安定面のリスクも意識しており、追加利上げの可能性も残した。
金融通貨委員会は同日、0.25ポイントの利上げを全会一致で決定した。韓国銀行は、2026年の経済成長率が5月時点の見通しである2.6%を大きく上回るとみており、コア物価上昇率も従来予測の2.4%を上回ると見込んでいる。
今回の判断で焦点となったのは、半導体価格の上昇が所得と内需に波及する経路だ。シン・ヒョンソン総裁は記者会見で、世界的なAI普及の流れの中で、韓国が主要サプライチェーンの一角として恩恵を受けていると説明した。半導体価格の急騰が企業収益や投資、賃金、税収の増加を通じて、内需の回復につながり得るとの見方を示した。
実際、2026年1〜3月期の国内総生産(GDP)は前年同期比3.8%増だったのに対し、国内総所得(GDI)は13.2%増となった。輸出数量の増加に加え、半導体価格の上昇で交易条件が改善し、所得の伸びが生産を上回ったためだ。
シン総裁は、こうした所得増が消費に広がれば、需要面からの物価圧力を強める可能性があると指摘し、「株価より半導体価格を注視したい」と強調した。半導体価格の動向は、中長期の成長トレンドや今後の金融政策を見極めるうえで重要な手がかりになるとの認識を示した。
証券業界でも、今回の決定は需要面からのインフレ圧力を韓国銀行がより明確に意識した局面だとの受け止めが広がった。ハナ証券のパク・ジュヌ研究員は、5月会合が需要面の物価圧力を見極める転換点だったとすれば、今回はその判断に一段と自信を深めた会合だったと分析した。
累積してきた金融安定リスクも、利上げの背景にある。6月の銀行の家計向け融資は7兆6000億ウォン(約8360億円)増加した。このうち住宅ローンが4兆3000億ウォン(約4730億円)、その他の融資が3兆3000億ウォン(約3630億円)増えた。首都圏の住宅価格上昇率は4月の0.3%から5月に0.5%、6月に0.7%へ拡大し、ソウルは6月単月で1.0%上昇した。米ドル/ウォン相場も一時1ドル=1500ウォン台半ばまでウォン安が進むなど、高い変動性を示した。
◆金融安定を優先した利上げ、企業・家計の負担増に
もっとも、金融安定を重視した今回の利上げは、企業や家計、金融市場に新たな負担をもたらす可能性がある。
市場金利の上昇は資金調達コストや利払い負担を押し上げる。株式市場の変動性が高まれば、信用取引を利用する投資家の損失リスクも広がりやすい。
とりわけ株式市場の値動きが荒くなれば、信用取引融資や未収金取引で反対売買が増え、個人投資家の損失が膨らむ恐れがある。一方、シン総裁は最近の株価下落について、金融システム全体のリスクに波及する可能性は限定的との見方を示した。
企業と家計の利払い負担も重くなる見通しだ。市場金利が上がれば、社債発行や銀行借り入れのコストが増し、企業の資金調達環境は悪化しやすい。中低信用層や零細自営業者、経営基盤の弱い企業では、債務返済負担が相対的に大きくなり、延滞や不良債権化のリスクが高まる可能性がある。
金融監督院も、利上げに伴う副作用の点検に乗り出した。政策金利引き上げ直後に金融状況点検会議を開き、証券会社ごとの信用取引融資や未収金取引の推移、反対売買の発生可能性を確認する方針だ。
あわせて、企業の資金調達環境や脆弱な債務者の利払い負担、融資延滞率や不良化拡大の可能性も点検し、金融会社の資金供給が過度に萎縮しないよう管理する構えだ。
◆市場負担増でも、韓国銀行は追加利上げの余地残す
市場の関心は、今回の利上げが本格的な引き締め局面の起点になるかどうかに移っている。
韓国銀行は今回の決定後も、追加利上げの可能性を排除していないとみられる。シン総裁は、今後の会合はいずれも経済指標次第で政策変更があり得るとの認識を示し、追加利上げの可能性を否定しなかった。韓国銀行は4〜6月期のGDPとGDI、7月のコア物価と生活物価、期待インフレ率、半導体価格の動向を見極めたうえで、追加利上げの可否を判断する方針だ。
今後の金利の方向性を左右する最大の変数は、半導体好況がどこまで続き、増加した所得が消費と物価にどの程度の速さで波及するかだ。成長が強い局面で首都圏の住宅価格と家計融資の拡大が続けば、追加引き締めの可能性は一段と高まり得る。
一方で、金利上昇が企業の資金調達や脆弱な債務者、雇用、消費を想定以上に早く冷やす場合、追加利上げのペースは緩やかになる可能性がある。半導体好況が輸出と所得を押し上げる効果と、物価圧力を強める影響のどちらがより強く出るかが、今後の金融政策の行方を左右しそうだ。
パク研究員は「韓国銀行の足元の成長判断が維持されれば、8月の利上げの可能性も十分ある」と指摘した。そのうえで、「株式市場など金融市場より実体指標を重視した点は、引き締め基調が簡単には変わらないことを意味する」と述べた。ハナ証券は、8月、11月、2027年2月に追加利上げが実施され、最終的な政策金利は年3.50%に達すると見込んでいる。
さらに同研究員は、「企業の利益見通しなどを踏まえると、短期的に半導体価格や輸出の好調、成長率指標が大きく崩れる可能性は限られる」としたうえで、「いまは利上げ局面の初期段階であり、強い引き締めスタンスに注目すべき局面だ」と述べた。