DTCCは約1000銘柄を対象にトークン化証券サービスの実運用を開始した。写真=DTCC

米証券決済機関のDepository Trust & Clearing Corporation(DTCC)は15日(現地時間)、Microsoft株や米国債などを対象とするトークン化証券サービスの実運用を開始した。試験用の模擬環境ではなく、実資産を扱う本番環境で稼働させる。約1000銘柄を対象に7カ月間試験運用し、10月ごろの全面展開を目指す。

ブロックチェーンメディアのCoinPostによると、今回の取り組みは、既存の証券決済インフラの中でトークン化資産を実際の取引や担保移転に活用する初期段階に当たる。

対象は、Microsoft株、暗号資産関連企業Circle Internet Group株、Invesco QQQ Trust、State Street SPDR S&P 500 ETF Trust、iShares 0-3 Month Treasury Bond ETFに加え、各種償還年限の米国債に限定した。DTCCは想定外のリスクや市場の混乱を避けるため、まずは流動性の高い資産を中心に約1000銘柄へ絞って運用する。

サービスは、DTCC傘下の預託機関DTCが手がけた。参加機関はトークン化資産を担保移転やレポ取引、株式取引などに活用する。決済基盤には、DTCCのプライベートブロックチェーン「Hyperledger Besu」と、金融機関向けブロックチェーン基盤「Canton Network」を用いる。

試験運用には、JPモルガン、BlackRock、Goldman Sachs、Vanguard、ニューヨーク証券取引所(NYSE)など、金融機関と技術ベンダーを含む約40社が参加した。

DTCCはこれに先立ち、50社超が加わる業界ワーキンググループを通じて、保管、資産運用、証券、取引所、デジタル資産インフラの各分野で技術面と運用面の検証を進めてきたとしている。

トークン化証券の仕組みは大きく2つに分かれる。1つは、原資産の値動きに連動するトークンを発行する方式で、幅広い取引参加者が売買できる一方、株主と同等の法的所有権や議決権は付与されない。

これに対し、DTCCが採用したのは、実株と同等の権利を持つ形でトークンを設計する方式だ。配当受領権や議決権、法的所有権を付与する一方、流通は承認を受けた金融機関の間に限定する。

法的な裏付けとなるのは、米証券取引委員会(SEC)が2025年12月に発出したノーアクションレターだ。SECはDTCに対し、参加機関とその顧客向けにトークン化サービスを3年間提供することを認めた。対象資産も、Russell 1000構成銘柄や主要指数連動ETF、米国債など流動性の高い資産に限られる。

DTCCが今回強調したのは、単なる技術実証ではなく、既存の市場インフラとの接続にある。保管資産は114兆ドルを超え、流通中の証券識別番号も約140万件に上る。このため、導入初期から対象を広げるのではなく、統制しやすい資産群から段階的に進める方針を取った。

フランク・ラサラ社長兼最高経営責任者(CEO)は、資産のトークン化とブロックチェーン活用はメガトレンドだとしたうえで、システムの安全性と強靱性の確保、新技術による滞留流動性の活用が重要だと強調した。

10月に全面展開へ移行すれば、対象資産や参加機関の裾野がさらに広がる可能性がある。ただ、現時点では流動性の高い資産と承認機関間の取引に限定しており、今後の拡大局面でも規制の枠組みと市場安定策が重要な論点となりそうだ。

DTCCは、DTCが保管するトークン化資産を用い、トークン化環境で本番取引の処理に成功したと説明した。年内に予定するDTCC Tokenization Serviceの開始に向け、デジタル資本市場に向けた節目になるとの認識を示している。

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