韓国政府は、国産AIモデルを活用した汎用チャットボット「みんなのAI」を年内に全国民向けに無料公開する。2027年には予約や決済などを担うAIエージェントへ発展させ、「1人1AIエージェント」の実現を目指す。
あわせて、総額550兆ウォンの民間投資で進む超大型AIデータセンターの整備支援を強化する。フィジカルAIやAI半導体、量子技術、宇宙開発も重点分野に位置付け、関連施策を加速する方針だ。
科学技術情報通信部と宇宙航空庁は7月16日、青瓦台迎賓館で開かれた大統領への業務報告で、こうした内容を盛り込んだ2026年下半期の業務計画を公表した。
科学技術情報通信部は、AIを基盤とする社会の実現に向けた重点課題として、AIデータセンター、フィジカルAI、AI半導体の3大プロジェクトを掲げた。
◆12月に「みんなのAI」公開、生活密着型サービスも展開
「みんなのAI」は12月に公開する。国産AIモデルを基盤とした汎用チャットボットで、ChatGPTのような対話型AIを利用料や利用量の制限なく提供する。
奨学金や若年層向け支援金など、利用者が受けられる政府支援制度を検索・案内し、申請まで支援する機能も搭載する。2027年には、予約や決済といった実務もこなすAIエージェントへ移行する計画だ。
コン・ジノ科学技術情報通信部人工知能政策企画課長は15日の事前説明会で、「すべての国民がAIを簡単に、負担なく使えるようにするのが基本原則だ」と述べた。その上で、「AIエージェントへ進化させる過程で、『みんなのAI』の価値が循環する構造も視野に入れている」と説明した。
同部は年内に514万人へAI教育の機会を提供するほか、農畜産物の価格比較、AIによる国税相談、国家遺産の解説、児童・青少年の危機対応など、生活に密着したAIサービスを順次投入する。2027年までに計10件のサービスを展開する計画だ。
◆550兆ウォン規模のAIデータセンター支援を本格化
AIデータセンターは国家戦略産業として育成する。SK、GS、Naverなどが総額550兆ウォン規模で進めるGW級AIデータセンター建設に向け、省庁横断タスクフォース、官民アライアンス、専担支援班の3本柱で支援体制を整える。
電力や用地の確保、許認可などの行政手続きを迅速化し、事業化を後押しする。2027年には、AIデータセンター向け中核ソリューションや、IT、電力、冷却など主要設備の国産化・高度化を進める。クラスター造成と連動し、人材、テストラボ、金融、輸出までを一体で支援する方針だ。
同部は2026年下半期に、世界トップ10級の独自AIモデルの確保を目指す。GPU、データ、人材を集中的に支援し、世界最高水準級のモデルへ引き上げる考えだ。2028年までにNVIDIAのB200換算で先端GPU約5万基を確保し、9月にはスーパーコンピューター6号機の稼働を予定する。
ペ・ギョンフン副首相兼科学技術情報通信部長官は、「インフラ支援がさらに強化されれば、韓国もミトス級のフロンティアAIモデルを開発できる」と述べた。
フィジカルAIでは世界最高水準を目標に据える。年内に独自のワールドモデル開発に着手し、蓄積データを基に3年以内の基盤モデル開発を目指す。製造、国防、ケア、農業などへの適用を進め、輸出産業として育成する方針だ。
AI半導体では、チップ、インフラ、ネットワーク、ソフトウェア、サービスまでを国産技術で構成するフルパッケージ型のエコシステム構築を掲げた。1nm級半導体と次世代HBMの開発にも着手し、年内に関連事業のロードマップを策定する。
ユン・オク研究開発政策課長は、「次世代半導体技術は、従来比で性能を10倍以上に高めることを目標としている」と説明した。「演算素子と一体化した二重積層技術を開発し、エネルギー効率の向上も図る事業だ」と述べた。
◆セキュリティ対応を強化、地域AX拠点も拡大
AIの普及に伴うセキュリティリスクへの対応も強化する。科学技術情報通信部は7月から、先端AIを活用して通信やプラットフォームなど、国民生活や安全に関わる基盤施設の脆弱性点検を進めている。
2026年下半期には、国産独自AIモデルを基盤とするセキュリティ特化型AIモデルを開発し、普及を進める。主要AIモデルの安全性評価と結果の公開、評価用データセットの整備も推進する。
通信費負担の軽減策としては、7月中にMVNOの競争力強化策をまとめ、10月から利用者に最適料金プランを案内する仕組みを導入する。屋内5Gの品質評価を強化し、地下鉄や市内・広域バスの公衆Wi-Fiも高度化する。
AI人材とスタートアップ支援も拡充する。AIスタートアップ向けの官民共同投資財源は年内に2兆ウォンへ拡大する。あわせて、創業初期のAIスタートアップを対象に、200億ウォン規模の「AI冒険ファンド」を新設する。
科学技術院付設の英才学校は忠北と光州に2校を新設し、既存高校も3校前後を英才学校へ転換する。研究費、ビザ、住居などを支援し、年内に海外人材約600人の国内誘致を目指す。
AI中心大学とAX大学院を運営し、科学技術院内の創業院は現在の1カ所から4カ所へ拡大する。年内に500以上のディープテック創業チームを発掘する計画だ。
地域では2026年下半期に、西南圏のモビリティ・エネルギー、東南圏の精密製造、大邱・慶北のバイオヘルスケアとロボット、全北のAI工場を軸に4大AX拠点を造成する。2027年には中部、江原、済州を加え、全国規模のAX体制へ広げる。
◆量子・創薬・BCIを推進、「K-ムーンショット」本格始動
AIを科学技術研究に結び付ける「K-ムーンショット」も本格的に進める。2035年までに、国家競争力の飛躍に必要な国家的課題をAIで解決する任務志向型の研究開発プログラムとして、12の重点課題の解決を目標に掲げた。
ク・ヒョクチェ第1次官は、「12分野ごとのマイルストーンの整理作業が近く完了する」とし、「8月中に総合計画を説明する予定だ」と述べた。
量子分野では、年内に50量子ビットの国産量子コンピューターを確保し、2029年までに100量子ビット性能の誤り訂正用量子コンピューターを開発する。量子クラスターを指定し、地域基盤の量子活用事例も発掘する。
創薬分野では、AIが設計した候補物質をAIとロボットで検証する自律実験インフラを整備する。2027年にがん特化型AIモデルの開発を始め、2028年末に初期モデルを公開する予定だ。
ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)では、8月に産学研病の協議体を発足する。2027年から脳とコンピューター間の信号を解釈するAI基盤技術の開発に着手し、2030年には四肢麻痺患者向け製品の実証を進める。
研究行政にもAIを導入する。評価委員の選定、研究費のモニタリング、研究行政規定の解釈などにAIを活用し、R&D管理の公正性と信頼性を高める。
研究機関システムと省庁横断統合研究支援システム(IRIS)の連携も拡大し、研究者が両システムに重複入力する負担を軽減する。研究課題(IRIS)、研究費(Ezbaro・RCMS)、成果公開(NTIS)などに分かれて運用されてきた主要研究支援システムは、2028年までに統合する。
研究目標を達成できなくても、研究プロセスが優れていれば後続研究を支援する「失敗の資産化」制度も導入する。
民間投資が難しい新技術分野では、政府がリスクを分担し、投資成功時には回収・再投資の好循環を可能にする「投資型R&D」を導入する。今年中に告示を制定して法的根拠を整備し、2027年に試験事業へ入る。
研究課題中心運営制度(PBS)の段階的廃止に伴い、年内に出捐研究機関ごとの固有任務も明確化する。監査、採用、広報など共通の行政機能を統合し、出捐研究機関の技術料収入を優秀職員への賞与に活用できるよう、技術移転制度も見直す。
◆ヌリ号5回目打ち上げ、再使用ロケット開発も着手
宇宙航空庁は、世界5大宇宙航空強国入りを目標に、2026年下半期に超小型群集衛星など15機を搭載したヌリ号5回目の打ち上げを進める。打ち上げ費用を従来の10分の1に抑える再使用型次世代ロケットの開発と、第2宇宙センター建設地の選定にも着手する。
2026年下半期には「月宇宙環境モニター(LUSEM)」を打ち上げ、2029年に月軌道通信衛星、2030年に小型月着陸船の打ち上げを推進する。2035年までに韓国型低軌道衛星通信網を構築し、宇宙航空企業1200社、グローバル市場シェア3%の達成を目指す。
ペ・ギョンフン副首相兼科学技術情報通信部長官は、「AIと科学技術を通じ、国民すべてがともに成長し、幸福を実感できる国をつくる」と述べた。