Steam Deck LCDモデル向けの純正交換用バッテリーを巡る供給打ち切り懸念が後退した。ValveはiFixit経由で同部品の供給を継続する方針を明らかにし、ユーザーは今後も純正バッテリーを購入できる見通しとなった。
米ITメディアのThe Vergeが15日(現地時間)に報じたところによると、ValveはiFixitとの協議を経て、Steam Deck LCD向けバッテリーの供給継続を決定した。部品の在庫は来週にも確保される見込みだ。
発端となったのは、iFixitのCEO、カイル・ビンス氏の発言だ。同氏は同日午前、The Vergeに対し、ValveからSteam Deck LCD向けの交換用バッテリーとディスプレイについて、生産を打ち切る可能性があるとの通知を受けたと明らかにしていた。
ただ、その後に事態は大きく動いた。Valveの広報を務めるケイシー・エイチソン・ボイル氏は、iFixitが今後も従来と同じOEM部品を、Valveの協力会社を通じて継続的に調達すると説明した。カイル・ビンス氏も、新たな供給ルートを確保したとした上で、「Valveがサプライヤーを紹介してくれた。現在は供給に向けた準備を進めている」と述べた。
これにより、Steam Deck LCD向けの公式部品供給体制が直ちに止まる可能性は低くなった。iFixitは、将来的にValveが当該部品の生産を完全に終了した場合でも、別の供給網を確保してバッテリー供給を続ける方針だという。カイル・ビンス氏は、今後もユーザーがこの製品向けバッテリーを入手できる方法を確保したい考えを示した。
今回の混乱は、Valveがこれまで重視してきた「修理しやすさ」の方針とも重なる。Valveはユーザー自身による修理を後押しするため、iFixitと連携して公式部品を販売してきた。カイル・ビンス氏は「Valveは非常に良いパートナーだった」と述べた上で、今回の供給不安は部品需要の見通しを立てる過程で生じた可能性が高いと説明。需要予測を誤れば、在庫不足にも過剰在庫にもつながり得るとした。
一部では、欧州連合(EU)の交換可能バッテリー規制との関連を指摘する見方も出ているが、直接の関係は薄い。EUは2027年2月から、新たに販売される機器に対し、ユーザー自身でバッテリー交換できる設計を義務付ける予定だ。これを受け、Nintendoは欧州で従来のSwitchの販売を終了し、交換可能バッテリーを採用した欧州向け「Switch 2」を投入した。
もっとも、Steam Deck LCDはValveが昨年12月に販売を終了しており、今回の規制の直接対象とは言いにくい。
米国で議論されている「修理する権利(Right to Repair)」関連法案についても、今回の判断に直接影響したとの見方は強くない。一部の州では一定期間の部品供給を求める規定があるものの、多くの法案はゲーム機を対象外としている。Steam Deckをゲーム機とみなすのか、PCとみなすのかについても、法的な整理は明確ではないという。
なお、純正バッテリーの入手が可能でも、交換作業そのものは容易ではない。Steam Deckのバッテリーは本体フレームに強く接着されており、無理に剥がせば発火の恐れがある。接着剤を十分に除去した上で、慎重に取り外す必要がある。Valveも2022年の設計時、接着剤を採用した理由を説明しつつ、この設計手法に満足していないとの立場を示していた。
今回の決定により、当面はSteam Deck LCD向けの修理体制が維持される見通しとなった。今後は、純正部品の供給がどこまで安定して続くかに加え、代替供給網が実際に円滑に機能するかが焦点となりそうだ。