Robinhoodが立ち上げたイーサリアムL2「Robinhood Chain」が急速に存在感を高めている。資金流入や取引高の拡大を受けてイーサリアム生態系への期待は高まっているが、L2の成長がETHそのものの需要や価格上昇に直結するかについては、なお見方が分かれている。
Cointelegraphが15日付で報じたところによると、Robinhood Chainは今月1日のローンチ後、短期間でイーサリアムの主要ロールアップの一角に浮上した。
Robinhood ChainはArbitrum基盤で構築された。ローンチから2週間で、1億4100万ドル超のETHがブリッジされた。DeFiLlamaの集計では、ETHを保有するウォレット数は50万を超えた。ミームコイン取引の活発化を背景に、日次のDEX取引高がイーサリアムのメインネットやCoinbaseのBaseを上回る日もあった。
市場もこれを好感した。CoinGeckoによると、ETH価格は7月1日の1582ドルから13日には1825ドルへ上昇し、約15%値上がりした。エリック・トランプはETH高を歓迎し、BitMine Immersion Technologies会長のトム・リーは、今回の動きが「ETH is Money」という投資ストーリーを強めるとの見方を示した。
リーはその理由として、ETHがイーサリアム生態系の基軸ガストークンであり、L2で発生した取引が最終的にイーサリアムのメインネットで決済される点を挙げた。
業界の関心を集めている背景には、技術面以上に事業主体の違いがある。ArbitrumやOptimism、Baseなど既存のL2もユーザー数や取引高を伸ばしてきたが、そこで生まれた経済価値の多くは各ロールアップ内にとどまり、ETH価格への波及は限定的だったとされる。
その点、Robinhood Chainは、数千万人の顧客を抱える上場リテールブローカーのRobinhoodが、トークン化株式やRWA取引のために構築したネットワークであることが差別化要因になっている。Token Terminalによると、Robinhood Chainはローンチから数日で、トークン化株式の保有者全体の約6.9%を取り込んだ。
こうした動きを、機関投資家採用のシグナルとみる声もある。Matter Labsの創業者兼CEO、アレックス・グルチョフスキーは、Robinhoodの取り組みを「実質的なマイルストーン」と評価した。
暗号資産ネイティブ企業ではなく、規制下にある上場企業がイーサリアムL2を実事業のインフラとして採用した点に意義があるという。
Bitwiseのシニアリサーチアナリスト、マックス・シャノンも、大手金融機関によるイーサリアム採用拡大を示すサインだと指摘した。ETHが、機関主導のL2生態系における準備資産として機能する可能性にも言及している。
一方で、L2の成長がそのままETH価値の上昇につながるわけではないとの反論もある。ARK Investのロレンツォ・バレンテは、Robinhood Chainがローンチ後に約81万6000ドルの収益を計上した一方、イーサリアムのメインネットに戻った割合は全体の0.15%にとどまったと分析した。
これに対し、分析企業Growthepieは実際の比率は約0.6%だと反論している。ただ、いずれの試算でも、メインネット収益への寄与が大きくない点は共通している。
実際、先週のRobinhood ChainはL2の中で最も多くのガス手数料を発生させたが、イーサリアムのメインネットが得た手数料は約4400ドルにとどまった。
焦点は、L2の活動拡大がどのような形でETH価値に結び付くかにある。グルチョフスキーは、ETHの長期的な価値は単純な手数料収入ではなく、L2生態系全体で流通する基軸資産として定着できるかどうかにかかっていると主張した。
ユーザーがステーブルコインで手数料を支払い、ガス代をほとんど意識しない形が広がったとしても、より多くの価値がイーサリアムを通じて最終決済されるのであれば、ETHは単なるガストークンではなく、生態系の中核となる通貨資産として機能し得るという見方だ。
もっとも、このシナリオの実現は未知数だ。6th Man Venturesのマイク・ドゥダスは、Robinhood Chainを「ここ数年で最も強力なイーサリアムの好材料」と評価する一方、「ETH is Money」という物語が市場で定着しなければ、ETH価格に大きな追い風とはならない可能性があると指摘した。
Pectraアップグレードなどでイーサリアムの拡張性は改善したものの、取引の増加が手数料収入の拡大やETHバーンの増加に結び付いていない点も課題として残る。トークン化株式やRWA取引がステーブルコイン中心で定着した場合、機関投資家がETHをどの程度直接保有するかも重要な変数になりそうだ。
Robinhood Chainは、大手金融会社がイーサリアム基盤を活用できる可能性を示した。ただ、L2の成長だけでETH需要と価値がともに拡大するかどうかは、今後の市場検証に委ねられている。