AIインフラ競争では、演算性能に加えてメモリ調達と価格管理の重要性が高まっている(写真:Shutterstock)

AIインフラ需要の急拡大を背景に、メモリ半導体価格の上昇がクラウド事業者の収益を圧迫している。AIクラウド大手のCoreWeaveは、長期供給契約に加え、デリバティブを活用した価格ヘッジも視野に入れ、メモリ価格の変動リスクへの備えを進める方針だ。

15日付のCryptopolitanによると、AIサービスの拡大でメモリはGPUと並ぶ重要なボトルネック資源となっており、クラウド各社は調達量の確保だけでなく、価格変動リスクへの対応も迫られている。

こうした変化は、メモリメーカーの業績にも表れている。Micronが6月24日に発表した2026会計年度第3四半期決算では、売上高が414億6000万ドルとなり、前四半期の238億6000万ドル、前年同期の93億ドルを大きく上回った。

クラウドメモリ事業の売上高は137億7000万ドルで、全社の売上総利益率は84.6%だった。

Micronのサンジェイ・メロートラCEOは、「AI時代においてメモリは最も戦略的な資産の一つになった」と述べ、AIインフラ拡大がメモリ業界の収益構造を大きく変えつつあるとの認識を示した。

市場調査会社TrendForceも、AIサーバー向けの高帯域幅メモリ(HBM)の供給不足が当面続くとの見通しを示している。最近の報告書では、AIサーバー向けメモリ不足を「新たな日常(New Normal)」と位置付けた。

AI需要が生産能力を上回る状況が続く限り、需給逼迫は簡単には解消しないとの見方が強い。市場では、Samsung Electronicsの次世代HBM4についても認証手続きが前倒しで進んでおり、初期段階でシェアを広げる可能性が取り沙汰されている。

Morgan Stanleyは、AI需要の拡大がメモリ業界で「チップフレーション(Chipflation)」を招いていると分析した。メモリ各社が汎用品より採算性の高いAI向け製品の生産を優先しており、価格体系そのものが変化しているという。

こうした環境下で、複数年契約を前提にサービスを提供するAIクラウド企業ほど負担は重い。サーバー原価に占めるメモリ比率が高いうえ、コスト上昇分を顧客料金へすぐに転嫁しにくいためだ。

CoreWeaveはこのリスクに備え、慎重な投資方針を打ち出している。マイケル・イントラトアCEOは4月の株主向け書簡で、「当社はクラウドを構築する企業である前に、リスクを管理してきた企業だ」と説明し、実需を見極めたうえでインフラを拡張する戦略を強調した。

この方針は成長実績にも表れている。CoreWeaveは、年商50億ドルに到達したクラウドサービス企業として最速だと公表した。売上高成長率は前年比168%で、現在は43カ所のデータセンターで850MW超のインフラを運用している。

受注残高も150億ドルから668億ドルへ拡大し、平均契約期間は従来の4年から5年に伸びた。

財務面でも改善が進んでいる。CoreWeaveは直近1年で、負債と資本を合わせて約180億ドルを調達し、加重平均の借入コストを300bp(3%ポイント)超引き下げた。これにより、年間で約7億ドルの金融コストを削減できると試算している。

イントラトアCEOは、長期の顧客契約と資金調達の枠組みを組み合わせた新たな事業モデルを構築したと説明した。

その代表例がMeta Platformsとの長期契約だ。CoreWeaveは4月、Meta Platformsと2032年まで続く約210億ドル規模のAIインフラ供給契約を締結した。これにより、NVIDIAの次世代AIプラットフォーム「Vera Rubin」の初期供給にもアクセスできるようになったとしている。

同社は、こうした長期契約を基盤に、ハードウェア投資計画の予見性を高められると説明している。

さらにCoreWeaveは、メモリ価格の変動そのものを金融手法で抑える案も検討している。Reutersによると、MicronやSanDiskなど主要サプライヤーと長期契約を結ぶ一方、プットオプションなどのデリバティブを使ったヘッジ戦略を検討しているという。

長期契約には、供給不足時でも必要部材を安定的に確保できる利点がある半面、市況が下落した場合でも高値で買い続けるリスクが残る。CoreWeaveは、金融ヘッジによってこうした価格変動リスクを抑える方法を模索している。

もっとも、検討はまだ初期段階にあり、現時点で実際のヘッジ取引を実行したわけではない。それでも業界では、AIインフラ企業が航空会社やエネルギー企業と同様に、主要部品の価格を財務リスクとして管理する時代に入りつつあるとの見方が出ている。

メモリ調達は、もはや単なる部材購入にとどまらない。AI向けメモリ需要が増え続けるなか、今後のAIインフラ企業の競争力は、技術力だけでなく、価格変動に対応する財務戦略にも左右されそうだ。

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