Bitcoinの合意ルール変更案「BIP-110」を巡り、開発者やマイナー、企業、ユーザーの間で対立が広がっている。争点は、Bitcoin取引への非金融データの書き込みを制限すべきかどうかと、その判断を誰が担うのかというガバナンスのあり方だ。
Decryptが15日(現地時間)に報じたところによると、BIP-110はBitcoin取引に非金融データを埋め込む複数の手法を一時的に制限する内容。支持派はブロックチェーン上のスパムを減らし、Bitcoinの通貨としての機能を強める効果があるとみている。
一方、反対派は、現在も有効で手数料を支払っている一部取引を無効化しかねないほか、将来のプロトコル変更に危うい前例を残す恐れがあると主張する。
BIP-110はソフトフォークによる変更案で、新たな取引アウトプットのサイズを34バイトに制限し、OP_RETURNアウトプットには83バイトの上限を再適用する内容を盛り込んだ。加えて、一部の検証要素を256バイトにまとめ、Taprootの一部機能も一時的に制限する設計としている。
Bitcoin取引には送金情報だけでなく、テキストや画像、トークンのメタデータなどを含めることもできる。BIP-110は、こうした用途を狭める方向に働く提案といえる。
市場の受け止めは割れている。マイケル・セイラー氏は「Bitcoinにとって危険な問題はスパム以外にも多い」と述べ、BIP-110がスパムを巡る論争を合意ルールの変更に持ち込んでいると批判した。
同氏は、有効で手数料も支払われている取引を無効にする前例を作ること自体が、より大きなリスクだと訴えた。
Casaの最高セキュリティ責任者を務めるジェイムソン・ロップ氏も、Bitcoinの強みは検閲耐性と予測可能性にあると指摘。BIP-110について、主観的に望ましくないとみなされた取引を検閲できるというシグナルになりかねず、「許可不要のプログラマブルマネー」としてのBitcoinのイメージを損なう恐れがあるとの見方を示した。
これに対し、BlockstreamのCEOであるアダム・バック氏は、Bitcoinの分散型構造の下では、ユーザーがほかの参加者に自らの選好を押し付けることはできないと強調した。技術的な合意形成のプロセスは容易に変わらないよう設計されており、仮に同意できなければフォークを作ることはできても、Bitcoin本流がそれに従うわけではないと述べた。
マイナーの支持は現時点で広がっていない。BIP-110の支持表明期間は8月に始まる予定で、これまでに賛同を示したマイナーは約1%にとどまっている。
もっとも、今回の対立は支持率とは別に、近年のBitcoinを巡るガバナンス論争として最大級の規模に膨らみつつある。
背景には、2023年初頭に登場したOrdinalsの存在がある。Bitcoin開発者のケイシー・ロダモア氏が開発したこのプロトコルは、画像やテキスト、映像などのデジタルコンテンツを、Bitcoinの最小単位であるサトシに直接刻み込めるようにした。
OrdinalsやBRC-20トークンの拡大によって、Bitcoinのブロック空間に対する需要は高まり、取引手数料も上昇した。支持派は、こうした手数料収入がマイナーの採算を押し上げ、長期的なネットワークの安全性にも寄与するとみている。
一方の反対派は、インスクリプションを正当な金融取引ではなく、ネットワークを悪用したスパムと捉える。この見方の違いが、BIP-110を巡る対立を深めている。
サムソン・モウ氏は、Bitcoinの参加者は単一のコミュニティではなく「同盟」として捉えるべきだと主張した。開発者、マイナー、企業、教育者、ユーザーが、それぞれ異なる形でネットワークに貢献しているという考え方だ。
同氏は、ブロックチェーン上のスパムに対する懸念には理解を示しつつも、プロトコル変更には幅広い合意が必要だとしてBIP-110への反対を表明した。あわせて、最近のOP_RETURNポリシー変更を巡っては、GitHubでの遮断や非公開での合意形成が対立を深めたと批判した。
今回の論争は、2015年から2017年にかけて続いたブロックサイズ戦争になぞらえる見方もある。当時は1MBのブロックサイズ上限を巡って対立が起き、最終的に大きなブロックを求める陣営はBitcoin CashとBitcoin SVへと分かれた。
こうした前例を踏まえると、BIP-110を巡る対立は単なる技術論争にとどまらない。Bitcoinネットワークの意思決定の仕組みや、将来的な分裂の可能性まで問う局面に発展している。