AIインフラ需要が鈍化しているとの市場の見方に対し、業界幹部らが相次いで否定的な見解を示している。企業はAI活用のコストに一段と敏感になっているものの、計算資源やデータセンターに対する実需は依然として強く、供給不足は続いているという。
米CNBCが12日(現地時間)に報じた。足元では半導体株やAIデータセンター関連株の値動きが荒くなっているが、現場では需要が供給を上回る状況に大きな変化はないとの見方が広がっている。
市場の焦点は、半導体株の調整をAI需要の減速シグナルとみなせるかどうかにある。Metaが余剰計算資源を外部販売すると明らかにしたことに加え、xAIも今年、余剰計算資源を貸し出したことが、需給緩和への警戒感を誘った。Metaの株価は上昇したものの、市場ではAI向け計算インフラがすでに過剰局面に入りつつあるのではないかとの疑念も出ていた。
ただ、業界側はこうした動きを市場全体の需要後退とは受け止めていない。Intelの元CEOで、現在はPlayground Globalのゼネラルパートナーを務めるパット・ゲルシンガー氏は、AI需要は事実上「ほぼ無限」だと指摘した。現実的な制約は電力供給だけであり、より高度な知能が生み出す経済価値は極めて大きいとの認識を示した。
NVIDIAのGPUを用いたデータセンターを構築しているNebiusも、需要が供給能力を継続的に上回っていると説明した。マーク・ボロディツキーCROは「直面している需要は例外的な水準にある。われわれが満たせる量を大きく超えている」と述べ、この状況は最近に始まったものではないと語った。
Cerebras Systemsも、MetaとxAIの事例は例外的だとの見方を示した。アンドリュー・フェルドマンCEOは、業界全体で計算資源の需要が供給可能な容量を大幅に上回っているうえ、データセンターそのものも不足していると指摘。計算インフラを支える関連部材や基盤要素も、業界全体で不足していると説明した。Cerebras Systemsは、データセンター市場でNVIDIAに挑む半導体スタートアップの1社として知られる。
Rebellionsも同様の見方だ。SamsungとSK hynixが出資する同社のパク・ソンヒョンCEOは、AIインフラの勢いは依然として強いとし、MetaやxAIの動きを超大手クラウド事業者のインフラ投資が過剰であることを示すシグナルとはみていないと述べた。
データセンター接続向けの光通信製品を手掛けるLumentumは、さらに強い需要を示唆した。マイケル・ハルストンCEOは、同社製品は向こう5年分まで実質的に売約済みだとし、確認できている需要に対応するため生産能力の増強に注力していると明らかにした。AIデータセンター拡張のボトルネックとされる光通信部品の需給が、なお逼迫していることを示している。
一方で、企業のAI導入の進め方には変化が出ている。これまでは、成果が見える前の段階でも、できるだけ多くAIを使う「トークン最大化」の動きが広がり、OpenAIやAnthropicの先端モデルが主に使われてきた。
足元では、コストの高い先端モデル一辺倒ではなく、DeepSeekやAlibabaのオープンソースモデルも活用しながら、性能とコストのバランスを見極める動きが強まっている。
ボロディツキー氏は、最高財務責任者(CFO)が求めているのは単なる支出削減ではなく、「価値の最大化」だと述べた。AIへの支出を正当化するには、実際に価値を生み出すことが必要だという。企業はより合理的な導入段階に移行しており、この変化がむしろ需要の持続につながるとの見方を示した。
AIモデルの選択も、用途ごとの最適化に向かっている。フェルドマン氏は、今後はあらゆる作業に同じモデルを使うのではなく、高度な課題には先端モデルを使い、比較的単純な作業には別のモデルを充てる構図が定着すると述べた。「食料品店に行くのに巨大なバスは要らない」として、用途ごとに適切な計算資源とモデルが使い分けられていくとの見通しを示した。
市場の関心は、AI需要そのものが減っているかどうかよりも、どの計算資源やモデルに予算が振り向けられるのかへ移りつつある。半導体やデータセンターへの投資熱は続く一方、企業はAIをどれだけ多く使うかではなく、どこに投じれば費用対効果を最大化できるかを、これまで以上に厳しく見極め始めている。