イルロン・マスク氏がTesla社員に対し、xAIのAIモデル「Grok」の利用を優先するよう求めたことが分かった。Teslaは外部AIツールの利用予算に週200ドルの上限を設ける一方、Grokは対象外とし、社内のAI活用を同モデル中心へ切り替える構えだ。
電気自動車メディアのElectrekが現地時間10日に報じたところによると、Teslaは週初め、Anthropic、OpenAI、GoogleのAIツールについて、社員1人当たり週200ドルまでに利用を制限した。これに対し、xAIのGrokは上限の適用外とした。
マスク氏は社員向けの内部メモで、Grok 4.5は競合モデルよりトークンコストが低いと説明し、可能な場合はGrokに切り替えるよう指示した。あわせてエンジニアに対し、実際に使ったうえで課題や改善案を自身にメールで送るよう求めたという。
Teslaはここ数カ月、社内でGrokのベータ版を試験運用してきた。今回の措置はその延長線上にある。xAIのプロダクト責任者アンドリュー・ミリッチ氏は、Tesla社員とともに不具合対応や機能改善に取り組んできたとされる。
ただ、社内の利用状況を知る関係者によると、Teslaのエンジニアは実際の開発現場ではAnthropicのClaudeをより好んで使ってきたという。
こうした指示は、Grok 4.5の性能を巡る議論とも重なる。xAIは現地時間9日にGrok 4.5を公開し、マスク氏はXへの投稿で「Opus級」のモデルだと紹介した。
一方、Electrekが示したベンチマークでは、Grok 4.5の総合順位は9位、スコアは76.3だった。OpenAI、Anthropic、Googleの複数モデルを下回り、コーディングスコアは68.6と、比較対象の中で最も低かった。
GitHubのイシュー解決能力を測る「DeepSWE 1.1」でも同様の傾向が出た。Grok 4.5は53%だったのに対し、Claude Fable 5は70%だった。
公開を巡っては、ベンチマークの信頼性に対する指摘も浮上した。AIコーディングツール企業のCursorは、自社コードベースの過去のスナップショットが誤ってGrok 4.5の学習データに含まれていたと明らかにした。このため、関連する比較指標は公開資料から除外された。
マスク氏自身も、Grok 4.5と競合モデルの性能差を全面的には否定していない。Xでは「公平に言えば、Fableは明らかにGrok 4.5より優れている」と投稿する一方、「多くの作業ではFable水準の性能は必要ない」とも述べ、費用対効果を強調した。
報道によると、マスク氏がGrokの強みとして挙げるのは価格面だ。Grok 4.5の作業当たりコストは約0.13ドルで、Claude Fable 5の約1.57ドルを大きく下回るという。
Teslaが外部モデルのみに予算上限を設け、Grokを例外扱いにした背景にも、こうしたコスト構造があるとみられている。
もっとも、社員が自律的にAIツールを選べる場面ではClaudeの利用が多かったことから、今回の指示は単なるコスト削減策にとどまらないとの見方もある。社内のAI利用方針をGrok中心へと寄せる狙いがにじむためだ。
一方で、xAIは現在、SpaceXに組み込まれた形だとも伝えられている。TeslaのAIツール選定が、マスク氏が関与する別企業の製品採用と直結する構図も浮かび上がる。
今後の焦点は、Teslaエンジニアの利用実態がGrok中心へ移るのか、そしてコスト削減と開発生産性の両立をどう図るのかに移る。