国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長は12日(現地時間)、欧州連合(EU)で電化の進展が鈍いとして警鐘を鳴らした。ロシアによるウクライナ侵攻を機にエネルギー安全保障の重要性が一段と高まったにもかかわらず、暖房や交通分野で化石燃料への依存がなお続いているとの認識を示した。
電気自動車関連メディアのCleanTechnicaによると、EUのエネルギー消費に占める電力比率は約23%にとどまる。ビロル氏は、この水準では電化のペースが不十分だと指摘した。
同氏は、ロシアのウクライナ侵攻後に欧州のエネルギー供給網が大きな打撃を受けたにもかかわらず、暖房と交通の電化は期待したほど進んでいないと述べた。こうした現状について「欧州にとって大きな誤りだ」との見方を示し、危機を受けてより迅速な対応が進むとみていたと語った。
そのうえで、EUは今後、電化のスピードを一段と引き上げる必要があると強調した。中国、日本、韓国の電化率はいずれも30%を超えており、欧州はこれらの国・地域に後れを取っているとした。
論点は発電量の拡大そのものではなく、暖房、交通、産業の各分野で化石燃料の使用を減らす構造転換にある。CleanTechnicaは、ロシア発のエネルギーショック後も欧州の化石燃料依存はなお高水準にあると伝えている。
背景には、エネルギー安全保障を巡る不安の長期化もある。中東地域の紛争で世界的な供給不安が続き、輸入化石燃料に依存する欧州の脆弱さが改めて浮き彫りになっている。
ダン・ヨルゲンセン欧州委員(エネルギー担当)も、EUの暖房、交通、産業部門が依然として輸入化石燃料に依存していると認めた。英国を含む各国では、中東情勢の緊迫化に伴う供給途絶リスクへの警戒が続いている。
また、米国の空爆で油田や主要港湾が被害を受け、世界の供給が制約されていることも不安材料として挙がった。
一方、市場や産業界では逆向きの動きも出ている。欧州の自動車業界では、二酸化炭素(CO2)排出基準の緩和を通じて、電化促進策の負担を和らげようとする動きが続いており、一部では実際に成果も出ているとされる。
エネルギー安全保障、産業競争力、転換コストが複雑に絡み合い、EUの電化政策は一貫して加速できていない格好だ。
こうしたなか、欧州委員会は来週、加盟国が電力関連の税負担を引き下げ、家庭向けヒートポンプや電気自動車、そのほかの環境技術の導入を後押しする計画を示す見通しだ。柱となるのは、電力への課税を化石燃料より低く設定することだ。
もっとも、この措置は電化拡大のコスト障壁を下げる半面、各国財政の負担要因にもなり得る。電気料金に上乗せされる税収への依存度が高い国もあり、負担の見直しは容易ではないためだ。
電力価格の仕組みを見直さなければ、ヒートポンプや電気自動車の普及を加速させるのは難しい。税制改革と補助金政策で暖房・交通部門の転換をどこまで押し上げられるかが、今後の焦点となる。