Metaは、Instagramの公開投稿を基にAI画像を生成する機能の提供を停止した。提供開始から数日での撤回となった。プライバシー侵害やディープフェイク拡散への懸念が広がり、市民団体やエンターテインメント業界からも批判が相次いでいた。
11日付のBusiness Insiderが報じた。MetaはInstagramの公式ブログで、この機能を今後提供しない方針を明らかにした。
停止したのは、利用者の公開投稿を使って画像を生成できるツールだ。8日に、Meta Superintelligence Labsの初の画像生成モデル「Muse Image」の公開に合わせて提供が始まったとみられる。「Muse Image」はMeta AIを通じて提供される。一方、写真を直接編集する別の機能は継続する。
Metaはブログで、有用なクリエイティブツールを提供するとともに、公開コンテンツをこうした用途に使うかどうかを利用者自身が管理できるようにする狙いだったと説明した。その一方で、利用者の受け止めが想定を下回ったとして、機能の停止を決めたとしている。
機能公開直後から、プライバシー侵害への懸念が急速に広がった。Instagram利用者の間では、自身の公開投稿がAI学習や画像生成に使われる可能性への反発が強まり、ディープフェイクの拡散につながるとの指摘も出た。XやRedditでは、この機能を無効にする方法を共有する投稿が急速に拡散した。
市民団体やエンターテインメント業界の反発も強かった。Internet Freedom Foundationの設立理事アパル・グプタはXに投稿した動画で、MetaはSNSプラットフォームの運営を理由に利用者のプライバシーを侵害してきたと批判した。
米俳優・放送人組合のSAG-AFTRAも、会員にこの機能を拒否するよう呼びかけた。同団体は、Instagram利用者の画像を活用するには、明確で目立つ事前同意の手続きが必要だと指摘。今回のような使い方は利用者感情を見誤った判断だと批判した。
さらに、Metaの撤回判断についてSAG-AFTRAは、本人の意思によらないデジタル複製のリスクがすでに広く認識されているなかで、そうした懸念を強める機能を打ち出したのは賢明ではなかったとして、停止を歓迎した。
大手芸能事務所を代理するCreative Artists Agency(CAA)も批判に加わった。CAAは、氏名、画像、外見、声、創作物は、いかなる第三者であっても明確に記録された同意なしに使用されるべきではないと主張した。そのうえで、創作者の権利と生計を守り、実効性のある統制権を確保することが、イノベーションの出発点だと訴えた。
今回の措置は、生成AIと創作者の権利を巡る衝突が、プラットフォーム業界全体の課題として広がっていることを示している。エンターテインメント業界では、AIが本人の同意なしに外見や声、象徴的な表現まで取り込む可能性への警戒感が強まってきた。マシュー・マコノヒーやジェレミー・クラークソンが、自身の外見をAIから保護するため商標登録に動いた事例も、この流れと重なる。
同様の論争は他のAIサービスでも起きている。OpenAIは2025年にAI動画生成プラットフォーム「Sora 2」を投入した後、商標権のあるキャラクターを使ったコンテンツ生成が可能だとして反発を招いた。Studio Ghibliなどエンターテインメント企業から問題提起が相次ぎ、その後OpenAIはDisneyと適法利用に向けた提携を結んだが、「Sora 2」は今年3月に終了した。
Metaがこの機能を短期間で取り下げたことで、今後は公開投稿の活用可否そのものに加え、利用者や創作者からどの水準の事前同意を得るのかが、AI機能の投入を巡る重要な論点として残りそうだ。