OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が、自社の最新モデル「ChatGPT 5.6」を「現時点で世界最高のAIモデル」とアピールし、Elon Musk氏とX(旧Twitter)上で再び応酬した。AppleがOpenAI側を営業秘密侵害で提訴した直後のやり取りで、AIモデル競争に加え、消費者向けハードウェアを巡る主導権争いも改めて注目を集めている。
米Business Insiderが12日付で報じたところによると、アルトマン氏はXへの投稿で、複数のベンチマークが「5.6」を現時点で世界最高のモデルと示していると主張した。そのうえで、「最も確かな判断材料は、Elonがまた自分に執着していることだ」と皮肉を交えて述べた。
今回の舌戦は、AppleがOpenAIとハードウェアパートナーのio、さらにApple出身の元社員2人を相手取り、営業秘密の不正取得を巡って提訴した直後に起きた。Appleは11日付の訴状で、OpenAI側が自社の技術情報を持ち出したと主張。これに対しOpenAIは、他社の営業秘密に関心はないとする短い声明を出した。
この訴訟は、OpenAIの消費者向けAIハードウェア拡大戦略とも重なる。OpenAIは昨年、Apple元デザイナーのジョニー・アイブ氏が手がけていたデザイン会社ioを買収し、AIソフトウェアにとどまらずデバイス領域へ事業を広げてきた。今回の提訴により、その過程でAppleとの摩擦が強まる可能性が改めて浮上した格好だ。
マスク氏は週末を通じ、アルトマン氏への攻勢を続けた。X上ではアルトマン氏を「スキャム・アルトマン」と繰り返し呼び、「オープンソースのAI慈善団体を乗っ取ったうえ、今度はAppleの携帯電話技術まで盗んだ」と皮肉った。さらに「次は何をやるつもりだ。これ以上はなかなか超えられないだろう」と挑発した。
これに対しアルトマン氏は、上場市場の投資家に短命な宇宙データセンター構想を売り込んでいるのはマスク氏の方だと応酬した。マスク氏はこれに「来年から実際に打ち上げを始める」と返信し、「保護観察官の許可が下りれば見に来ればいい」と揶揄した。
両氏の対立は今回が初めてではない。マスク氏とアルトマン氏は2015年にOpenAIを共同創業したが、その後はガバナンスや資金調達、事業の方向性を巡って決裂し、公然と対立してきた。
マスク氏は2024年、OpenAIとアルトマン氏、Greg Brockman氏を相手取り提訴し、非営利組織だったOpenAIを営利事業へ転換して当初の寄付趣旨を裏切ったと主張した。ただ、連邦陪審団は5月、マスク氏側の主張を退けており、同氏は控訴する意向を示している。
マスク氏は2023年に競合のxAIを設立し、現在はSpaceX傘下で事業を進めている。こうした中でアルトマン氏は、マスク氏の攻撃を自社モデルの競争力を示す材料として利用した一方、マスク氏はAppleの提訴を機に、OpenAIの倫理性や事業拡大路線への批判を強めた。
今回の応酬は、個人間の舌戦にとどまらない。AIモデルの競争激化と、消費者向けハードウェアを巡る主導権争いが同時進行している現状を映し出している。Appleの訴訟が法廷闘争としてどこまで広がるのか、またOpenAIのハードウェア戦略にどのような影響を与えるのかが、今後の焦点となる。