中国最大のDRAMメーカー、ChangXin Memory Technologies(CXMT)が、上海証券取引所の科創板への上場を通じて295億元を調達する大型IPOに乗り出す。AIデータセンター向けを中心にメモリ需要が拡大する中での上場で、中国メモリ産業の競争力と投資家の評価を占う案件として注目を集めている。
報道によると、CXMTは16日に公募を開始する。調達額は295億元(約43億3000万ドル)を見込み、約66億9000万株を売り出す計画。これは上場後の発行済み株式総数の約10%に相当する。主幹事を務めるChina International Capital Corporation(CICC)は、15%のオーバーアロットメントも設定した。
日程面では、機関投資家向けの需要予測を13日に開始し、最終的な公募価格は15日に決定する。機関投資家と個人投資家の申し込みは16日に行い、払い込みは20日までに完了する見通しだ。
今回の案件は、科創板では過去2番目の大型IPOとなる見込みだ。中国証券監督管理委員会は、SMICに次ぐ科創板2番目の大型上場であり、2026年のA株市場では最大のIPOになるとしている。
市場では、今回の上場を単なる大型案件ではなく、中国メモリ産業の成長力を見極める試金石とみる向きが強い。CXMTは中国最大のDRAM生産企業で、AIデータセンター拡大に伴う需要増の恩恵を直接受ける立場にある。世界のクラウド企業がAIインフラ投資を積み増す中、サーバー向けDRAMや高帯域幅メモリ(HBM)の需要が急拡大し、需給逼迫と価格上昇が続いている。
業績も急速に改善している。CXMTは前期に赤字を計上したが、2026年1〜3月期は純利益33億元となり、前年同期の純損失28億元から黒字転換した。売上高は前年同期比719%増の50億8000万元。DRAM供給が限られる中、AI関連需要の拡大とメモリ価格の上昇が収益を押し上げたとしている。
会社側は2026年上期についても強い見通しを示している。売上高は110億〜120億元、純利益は50億〜57億元を見込む。純利益の伸び率は前年同期比2244〜2544%に達する見通しだ。
市場環境も追い風だ。TrendForceは2026年7〜9月期のDRAM契約価格が13〜18%、NANDフラッシュ価格が10〜15%それぞれ上昇すると予測する。AIサーバー向けメモリに生産能力が振り向けられ、汎用メモリの供給が細っていることが背景にある。Gartnerも、2026年の世界半導体市場規模が1兆3000億ドルに近づき、その成長の約半分をメモリ分野が占めるとの見方を示した。
海外での採用拡大も焦点の1つだ。英Financial Times(FT)は、Appleが中国市場で販売する一部製品への採用を視野に、CXMT製品をテストしていると報じた。Samsung Electronics、SK hynix、Micron Technologyなどの世界大手との技術格差はなお残るものの、中国メモリ企業の存在感の高まりを示す動きと受け止められている。
一方、米国による対中半導体輸出規制は今後の成長における不確定要因となる。市場ではCXMTの企業価値を最大3兆元規模とみる見方があるが、この評価を維持するには、足元のメモリ市況だけに依存せず、次世代DRAMで継続的に競争力を確保できるかが課題となる。
投資家心理を支える材料として、主要株主の長期保有方針も挙がる。創業者のチュウ・イーミン氏は、上場後10年間は保有株を売却しない方針を示した。その後も毎年、残る持ち分の最大20%のみを処分する計画という。さらに、上場後3年経過時点から10年かけて、従業員に計7億6800万株を付与する長期報酬プログラムも進める。直近の時価ベースでは200億元超に相当し、中国A株市場でも最大級の従業員向け株式報酬事例とされる。
今回の公募結果は、中国メモリ産業に対する投資家の信認を示す最初の指標になる可能性がある。Yangtze Memory Technologiesも上場準備を進めており、CXMTの上場実績が今後の中国半導体企業のIPOにおける基準点となるかが注目される。