イーロン・マスク氏率いる宇宙航空・防衛企業SpaceXの株価は8日、148ドルで取引を終えた。ナスダック100に採用された後も、初値の150ドルを2営業日連続で下回った。指数組み入れに伴う買い需要が想定されたものの、株価の下支えにはつながらなかった。
米CNBCによると、SpaceXは6月12日に上場し、上場から1カ月足らずの7日にナスダック100に組み入れられた。新規上場企業に関する取引所規定の見直しを反映した措置で、ナスダック100連動のインデックスファンドやETFは、指数構成の変更に合わせてSpaceX株を組み入れる必要があった。QQQなど指数連動ファンドによる買い需要は、約43億ドル(約6450億円)に達すると見込まれていた。
ただ、市場ではこうした需要の大半が組み入れ前に先取りされていたとの見方が強い。当日の需給改善余地が限られ、指数採用そのものは株価押し上げ材料にならなかった。2024年12月にナスダック100へ採用されたPalantirでも、採用後数週間で株価が25%下落しており、同様の展開とみる向きもある。
SpaceX株は上場後3営業日で約50%上昇したが、その後の3営業日で上げ幅の大半を失った。6月16日には終値ベースで201.80ドルまで上昇したものの、その後は調整色を強め、8日終値は再び初値を下回る水準まで下落した。
今回の上場は大型案件でもあった。SpaceXは主幹事によるオーバーアロットメント(グリーンシュー)行使を含め、計857億ドル(約12兆8550億円)を調達した。当初は5億5560万株を1株135ドルで公開していた。
足元では割高感も意識されている。SpaceXの株価売上高倍率(P/S)はおよそ110倍で、ナスダック100銘柄の中でも高水準とされるRocket Labの88倍を約25%上回る。人工知能(AI)の新規事業が将来どこまで売上に結び付くか不透明な中、この水準の評価を正当化しにくいとの見方が出ている。
需給面では、流通株の少なさも変動要因だ。現在、公開市場で売買できる株式は全体の3〜5%にとどまる。SpaceXは今後180日にわたり、ロックアップ解除対象株を段階的に市場へ放出する計画で、8月6日の決算発表後から供給が増え始める見通しだ。同日が需給構造変化の最初の分岐点になるとの見方もある。
もっとも、証券各社の評価は総じて強気だ。Morgan Stanleyはカバレッジ開始に合わせ、投資判断を「オーバーウエート」、目標株価を300ドルとした。Bernsteinは「アウトパフォーム」で239ドル、RBCも「アウトパフォーム」で225ドル、UBSは「買い」で12カ月目標株価を210ドルに設定している。
強気見通しの背景には、再利用ロケット技術と打ち上げサービスでの優位性、衛星インターネット「Starlink」の大規模な事業基盤がある。いずれの事業も、今後さらに収益性を高める余地があるとみられている。
成長期待は宇宙事業の外にも広がる。一部アナリストは、SpaceXがエージェント型コーディングツールを含むAI製品・サービスや、軌道上データセンターの開発に乗り出す可能性を成長ドライバーとして挙げる。競合先としては、AnthropicのClaudeやOpenAIのCodexが想定されている。
一方で、慎重な見方も残る。MoffettNathansonは投資判断「中立」でカバレッジを開始し、CFRAは売りを推奨した。背景には、バリュエーションの高さとAI新規事業の不確実性があるとしている。
直近の株価下落は、上場直後の過熱感が一服する中で、ナスダック100採用という材料が織り込み済みとなり、高バリュエーションへの警戒感が重なった結果といえる。今後は8月6日の決算発表とロックアップ解除に伴う供給増に加え、Starlinkと打ち上げサービスの収益性改善、AI新規事業への期待が実際の業績にどう反映されるかが焦点となる。