米国で電力需要の拡大が見込まれる中、ビットコイン採掘業者が電力系統にとって「柔軟な大口需要家」として存在価値を示せるかが焦点になっている。2027年に向けて、需給逼迫時の負荷抑制実績や、系統異常時にも設備が安定して動作するかどうかが問われそうだ。
CryptoSlateが8日付で報じたところによると、米エネルギー情報局(EIA)は、米国の電力消費が2025年の4兆1950億kWhから、2026年に4兆2690億kWh、2027年に4兆3990億kWhへ増えると予測した。
EIAは需要増加の要因として、人工知能(AI)向けデータセンター、暗号資産採掘、電化の進展を挙げた。2025年から2027年までの増加分は2040億kWhで、平均連続負荷に換算すると約23.3GWに相当する。
2026年には商業用電力需要が1兆5500億kWhとなり、家庭向けの1兆5080億kWhを初めて上回る見通しだ。ビットコイン採掘業者は、データセンターや製造業、電化が進む家庭向け需要と並び、電力系統で競合する大口需要家として位置付けられている。
その中で問われているのは、採掘業者が単なる大量消費先ではなく、需給が逼迫した局面で消費電力を機動的に落とせる需要家かどうかだ。テキサス州の電力信頼性評議会(ERCOT)は、想定最大需要が75MW以上の施設を「大規模柔軟負荷」と定義し、データセンターと暗号資産採掘施設を州内需要の増加要因として重視している。
ERCOTは、特に暗号資産採掘業者を対象に、自主的な負荷削減の仕組みを運用している。需要急増時や発電設備の稼働余力が低下した際に、対象施設が消費電力を引き下げる枠組みだ。
もっとも、こうした柔軟性は市場環境の影響を受ける。2026年のテキサス州における採掘負荷に関する論文では、ビットコイン採掘需要は卸電力価格や同時ピーク時の送電料金インセンティブに反応するとされた。
一方で、ハッシュ価格が上昇すると、その反応は鈍る傾向も示された。採掘収益性が高まるほど、電力系統が逼迫しても操業停止に踏み切る誘因が弱まる可能性があることを意味する。
電力系統の逼迫はすでに表面化している。13州を管轄するPJM Interconnectionでは、今夏の供給逼迫局面で卸電力価格が急騰した。
EIAは2026年7月の見通しで、今夏の平均卸電力価格を1MWh当たり約45ドルとしていた。だが猛暑時には、バージニア州の卸電力価格が約40ドルから600ドル超まで跳ね上がった。当時のPJMの需要は160GW近くに達し、想定ピークの166.3GWに迫っていた。
PJMはその後、緊急の節電措置とデマンドレスポンス・プログラムによって、需要を抑制し、過去最高需要の更新を回避したと明らかにした。
電力コストの上昇も深刻だ。PJM管内では、データセンター主導で容量料金が1000%超上昇し、オハイオ州のある製造業者は、月間の容量料金が1600ドルから1万2000ドルに急増したと公表した。
こうした環境では、採掘業者を含む大規模な商業用負荷が、電気料金上昇の一因として批判の対象になりやすい。
系統運用者が注視するもう1つの評価軸は、系統異常時の対応力だ。ERCOTは、データセンターや暗号資産採掘施設を含む大規模負荷4グループについて、特定の系統故障時に5000MW超が一斉に遮断されるリスクを把握している。
2023年以降、データセンターまたは暗号資産採掘に関連する遮断事例は少なくとも26件に上る。これを受け、採掘業者が電圧異常時にも設備の安定性を維持できるかどうかが、電力系統の信頼性を左右する論点として浮上している。
市場では2027年が事実上の見極めの時期になるとみられている。系統運用者は、それまでに蓄積されるデータを基に、大口需要家が運用者との取り決め通りに行動したかどうかを判断できるようになるという。
負荷削減の実績が記録として残り、電圧異常にも耐え、再生可能エネルギーの余剰電力を吸収する意思を示した採掘施設は、次の供給逼迫局面でも、柔軟な需要家として一定の評価を得る可能性がある。
逆に、こうした条件を示せなければ、採掘業者には逆風となる。系統接続の審査が厳格化し、電力調達コストが上昇する可能性があるためだ。
採掘専業の事業者は、AIや高性能コンピューティング(HPC)向けの賃貸需要も取り込める事業者に比べ、企業価値評価の面で見劣りする可能性もある。
もっとも、電力削減を実際に動員可能なサービスとして証明できれば、評価は変わり得る。EIAは2027年の電源構成について、再生可能エネルギー比率が27%となり、このうち風力と太陽光が21%、水力が6%を占めると見込む。石炭の比率は15%だ。
再生可能エネルギー比率が高まるほど、ある時間帯には余剰電力を吸収し、次の時間帯には供給不足に伴う価格急騰に応じて即座に需要を落とせる負荷の価値は高まる。ビットコイン採掘業者に2027年までに求められるのは、単なる消費量の大きさではない。電力系統が必要とする局面で、どれだけ柔軟に動けるかが問われている。