Micronの経営陣が、足元のメモリ供給逼迫の背景として、大口顧客による長期購入契約と強い価格交渉力に言及した。特定企業名は挙げていないものの、市場ではAppleの調達戦略を念頭に置いた発言との見方が広がっている。
ITメディアの9to5Macが6月25日(現地時間)に報じたところによると、Micronのスミット・サダナ最高事業責任者(CBO)はインタビューで、低いメモリ価格が長期にわたって続いた結果、供給企業が生産能力を拡大しにくくなったとの見方を示した。
この発言は、AppleがMacBookやiPadの一部製品を値上げした直後に出た。Appleのティム・クック最高経営責任者(CEO)は米紙Wall Street Journal(WSJ)のインタビューで、メモリ供給不足が値上げの主因の一つだと説明している。
Appleはこれまで、長期購入契約を通じてメモリを比較的低価格で安定調達してきた代表例とみられてきた。大きな購買力を背景に供給企業と長期契約を結び、市況が上昇する局面でもコスト負担を相対的に抑えてきたとの見方がある。
一方、Micronはこうした取引構造が現在の供給逼迫を招いた一因になったとみている。サダナ氏は、長期間にわたる低価格が供給企業の収益性を圧迫し、設備増強に踏み切る動機を弱めた可能性があると示唆した。
十分な収益が確保できなければ生産能力の拡大は進まず、その後に需要が急増した局面では供給不足が一段と深刻になり得るという。
実際、Micronはメモリ価格の上昇を追い風に、市場予想を上回る業績を発表した。会計年度第3四半期の売上高は前年同期比346%増となり、売上総利益率は85%近くに達した。
第4四半期見通しも市場予想を上回り、発表後の時間外取引で株価は約15%上昇した。翌取引日も上昇基調が続いた。
市場では、同じメモリ供給逼迫を巡ってAppleとMicronが異なる説明を示している点にも注目が集まっている。Appleは供給不足を製品値上げの理由として挙げる一方、Micronは長期にわたる価格圧力が供給企業の投資余力を損ない、需給の逼迫を強めたとの立場を示している。
業界では、今回の議論がメモリ産業の契約構造にも影響を及ぼす可能性があるとの見方が出ている。大口顧客にとって長期契約はコスト管理の安定化につながる半面、供給企業の収益性が過度に低下すれば、設備投資や供給拡大が遅れる恐れがあるためだ。
とりわけAIサーバーや高性能コンピューティング向け需要が急増する局面では、こうした契約構造がメモリ市場全体の需給安定にも影響しかねないとの指摘がある。
今後の焦点は、メモリ供給拡大のペースに加え、大口顧客と半導体メーカーの長期購入契約の枠組みがどう変化するかだ。AI時代にメモリ需要の拡大が続く中、価格競争力と安定供給を両立する新たな契約モデルが登場するかどうかが注目される。