Appleがメモリ供給の逼迫を受け、中国DRAMメーカーのChangXin Memory Technologies(CXMT)製チップの採用を検討していることが分かった。ただ、米国の対中技術規制が壁となり、Apple向けのカスタムDRAMを調達するのは難しいとの見方が強い。
GigaZineが10日付で報じたところによると、Appleは中国で販売する端末向けにCXMT製メモリの採用可能性を探っている。ただし、米国の規制により、サプライチェーンへの本格的な組み込みは容易ではないという。
焦点となっているのは、CXMTがAppleの要求仕様に沿った製品を製造できるかどうかではなく、そのために必要な技術情報の提供が制限されている点だ。Appleはこれまで、製品性能を高めるため、部品を自社製品向けに細かく最適化してきた。
しかし米国の対中技術規制では、米国企業によるCXMTへの技術移転が制限されており、Appleが用いる特殊チップの技術情報や製品仕様も対象に含まれる。このため、AppleがCXMTに特注型メモリを発注するのは事実上難しいとみられている。
Appleは7月、中国市場向け端末にCXMT製DRAMを適用できるかどうかを試験したとされる。これは量産採用の決定というより、商用化前の技術検証に近い位置付けで、政治的な承認の有無とは別に、供給網に組み込めるかを事前に見極める狙いが強かったという。
背景には、メモリ価格の急騰と供給不足がある。米政府は2024年12月、半導体製造装置24品目とソフトウェア3区分について対中輸出禁止措置を打ち出し、中国企業140社をいわゆる「1260H条リスト」に追加した。
当時、CXMTは対象外だったが、2026年6月に新たに188社が追加され、CXMTも規制対象に加わった。その後、Appleはトランプ政権に対し、CXMTとの取引を認めるよう求めたと報じられている。
市場では、CXMTの台頭そのものには注目が集まっている。CXMTは世界のDRAM市場で4位圏に浮上しつつあり、Samsung Electronics、SK hynix、Micronの3社が主導してきた市場において、新たな供給先となる可能性があるためだ。
一方、業界アナリストの間では、CXMTの技術力は依然として海外大手に比べて見劣りするとの見方が多い。最先端の製造装置を使えないことが制約になっているとされる。Appleが採用できたとしても、標準仕様のCXMT製メモリに限られ、一部製品では設計の見直しが必要になる可能性がある。
価格面でも、Appleの調達戦略は一段と難しくなっている。Appleはメモリ価格の急騰を受け、6月にMacやiPadなど複数のハードウェア製品を一斉値上げした。
これまでAppleは、複数のメモリメーカーを競わせることで調達価格を抑える戦略を取ってきた。だが、需要増と米規制を背景にMicronの交渉力が高まり、従来型の調達手法が通用しにくくなっているとの見方が出ている。さらにCXMTも値下げ要求に応じず、SK hynixやSamsung Electronicsと同水準、あるいはそれ以上の価格を提示したとされる。
Appleに先行して、PCメーカーでは限定的ながらCXMT製メモリの採用が始まっている。報道によると、HP、ASUS、Acerは、米国外市場で販売する一部ノートPCにCXMT製チップを採用し始めた。
もっとも、適用範囲はなお限定的だ。CXMTは生産量の大半をHuaweiなど中国顧客向けに優先供給しており、7月時点では、CXMT製チップの搭載量も採用モデル数もごく限られた水準にとどまるという。
PC各社も、既存のメモリ大手3社との関係に配慮し、慎重姿勢を崩していない。それでも、かつてないメモリ不足を背景に、主要PCメーカーの多くが2026年半ばまでにCXMT製DRAMの認証手続きを終え、ノートPC向けを中心に限定採用を始めたとの証言もある。
Acerは調達先について明らかにしていないが、部品価格の変動に対応するため、「複数のグローバルメーカーや供給業者と緊密に連携し、柔軟に運営を調整している」と説明した。あわせて、「複数のメーカーや供給業者との協力を通じて、サプライチェーンの強靱性を高めている」としている。
CXMTはメモリ不足に対する代替調達先として浮上しているものの、Appleにとっては規制、価格、仕様最適化という複数の課題を同時に解く必要がある。仮にCXMTがAppleのサプライチェーンに組み込まれたとしても、当面は中国市場向けの一部製品、もしくは標準仕様メモリの採用にとどまる公算が大きい。