写真=NVIDIA

人工知能(AI)インフラの拡大に伴って電力確保が世界的な課題となる中、NVIDIAのAI技術が波力発電の開発にも活用される。波力エネルギー企業のEco Wave Powerは、NVIDIAのAI基盤とOmniverseのデジタルツイン技術を使い、次世代の波力発電システムの開発を進めている。

25日付のGIGAZINEによると、同社が採用するのは、新たな発電所を建設するのではなく、既存の港湾や防波堤などの海岸インフラに発電設備を設置する方式だ。データセンターや産業団地など電力需要の大きい地域の近くに設備を置くことで、送電網の負担軽減を図る。

AIデータセンターの拡大で電力需要は急増している。一方、送電網の増強には許認可や用地確保、多額の投資が必要で、整備完了までに数年かかる。このため、既存の海岸インフラを活用する手法が代替策として注目されている。

Eco Wave Powerは、NVIDIAのスタートアップ支援プログラム「Inception」のサステナビリティプロジェクトにも参加している。開発の柱となるのは、実際の設備を建設する前に、波や浮体構造物の動きをデジタルツインで仮想空間に再現する手法だ。

Omniverse上で波のパターンや構造物の挙動、設備配置、運用シナリオを事前にシミュレーションし、最適な設計を探る。これにより、設計判断の迅速化に加え、開発コストや試行錯誤による手戻りの削減も見込む。

共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のインナ・ブラバマン氏は、波のエネルギーについて「最大級の再生可能エネルギー資源の一つ」と評価した。その上で、商用化を阻んできた複雑さをいかに減らすかに開発の焦点を置いてきたと説明した。

技術構成も従来方式から見直した。従来はコンピュータやセンサー、制御装置を海上の浮体構造物に直接搭載していたが、過酷な海上環境で故障しやすい課題があったという。現在は、コンピュータやセンサー、油圧変換装置、電気設備などを陸上に移し、高価な機器をより安全な環境で運用できるようにした。

同社は、波力発電の大きな利点として発電の安定性を挙げる。ブラバマン氏は、波力は再生可能エネルギーの中でも変動性が低い電源だと説明。太陽光のように夜間や冬季、曇天の影響を大きく受けにくく、24時間の発電が可能だとしている。

Eco Wave Powerはすでに複数の国で実証事業を進めている。イスラエルのヤッファ港ではEDF Power Solutionsとイスラエル・エネルギー省、米ロサンゼルス港ではAltaSeaとShellが参加するプロジェクトを運営する。ポルトガルのレイショイス港、台湾の蘇澳港、インドのムンバイでも新規事業を進めている。

特にロサンゼルス港では、波力発電だけでデータセンターを運用できるかを検証する実証プロジェクトも始まった。既存の電力網に依存せず、AIデータセンターに電力を供給できるかを確認する試験だ。

NVIDIAはこれにあわせ、AIを活用して再生可能エネルギーの発電量が多い時間帯に電力消費の大きい処理を自動的に割り当てる技術も示している。分散型電力システム全体のエネルギー利用をリアルタイムで最適化する取り組みも進める。

今回の取り組みは、単なる再生可能エネルギーの導入にとどまらない。発電設備の設計・運用からデータセンターの電力管理までをAIでつなぎ、次世代のエネルギーインフラモデルを探る事例といえそうだ。

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