米Intelがファウンドリー事業で攻勢を強めている。TeslaがIntelの1.4ナノ級プロセス「14A」でAI半導体の生産を委託する方針とされるほか、GoogleもTPU(Tensor Processing Unit)生産の一部をIntelへ移したと報じられた。TSMCの供給逼迫が続く中、Samsung Electronicsは7月1日に開催する「SAFEフォーラム2026」と「Samsung Foundry Forum 2026(SFF 2026)」で先端戦略を打ち出し、巻き返しを狙う。
ファウンドリー市場の競争環境は、TSMCの生産余力の逼迫を背景に変化している。NVIDIAやAMDのAI半導体需要がTSMCに集中し、納期は長期化。先端工程の利用コストも上昇している。
こうした中、供給網の分散を進めたい顧客企業の代替先としてSamsung Electronicsに期待が集まってきた。Samsungのファウンドリー事業が、NVIDIAのAI推論向け半導体や自動運転向け半導体、TeslaやApple向け案件の獲得を進め、収益改善を急いでいる背景にもこうした事情がある。
もっとも、その受け皿となるはずだった領域にIntelが本格参入しつつある。国内生産を重視する米政権の支援も、Intelの追い上げを後押ししている。
米政府はCHIPS Actに基づく補助金に加え、Intelへの支援を強化しており、同社は事実上の国家戦略企業として位置付けられている。IntelはMicrosoftに続き、今年はTeslaとGoogleの案件も取り込んだとされる。
Appleについても、台湾への生産集中を見直す流れの中で、Intel活用の可能性が取り沙汰されている。
この結果、NVIDIA、Tesla、Appleなど米大手顧客の案件を巡り、Samsung ElectronicsとIntelの受注競争は避けられない情勢となった。代替先としてSamsungではなく米国内のIntelを選ぶ動きが広がれば、Samsungにとっては打撃となる。
供給網の安全保障を掲げる米国の国内生産重視は、政策スローガンにとどまらず、Apple、Tesla、Googleといった大手テック企業の商業判断にも影響を及ぼし始めている。
Intelは組織面の立て直しも急いでいる。Lee Seok-ki元SKオン社長をファウンドリー部門のシニアバイスプレジデントに起用し、先端パッケージング、システム統合、バックエンド技術の開発・製造を統括させる。
前工程はナガ・チャンドラセカラン シニアバイスプレジデントが担い、前工程と後工程を分けるツートラック体制を整えた。先端パッケージングの専担事業部も運営し、「EMIB-T」「HBI」などの技術を量産体制へ広げる構想だ。
【Samsung Electronics、フォーラムで先端戦略提示】
Samsung Electronicsの対応策の軸となるのは、技術面での優位性だ。同社はファウンドリー、HBM(高帯域幅メモリー)、先端パッケージングを併せ持つ世界でも数少ない企業とされる。
半導体設計からメモリー統合、パッケージングまでを一括で提供するターンキー型ソリューションと、3ナノ・2ナノのGAA(Gate-All-Around)プロセスの歩留まり安定化が、TSMCからあふれた需要を取り込むためのてこになるとの見方が出ている。米テキサス州テイラー工場も、「Made in USA」需要を取り込む拠点となる可能性がある。
その戦略の輪郭は、7月1日にソウル市内の瑞草社屋で開催されるSAFEフォーラム2026とSFF 2026で示される見通しだ。両イベントは、ファウンドリー顧客や協力会社と最新技術や成長ロードマップを共有する年次行事となる。
フォーラムは、シン・ジョンシン デザインプラットフォーム開発室長によるファウンドリー事業の現況説明で始まり、その後、ライブラリーや顧客設計支援などの実務セッションが続く。AI半導体設計企業Rebellionsのパク・ソンヒョン代表やSiemens EDAの関係者も登壇し、協業先との連携強化を打ち出す見込みだ。
焦点は、2ナノ以下の先端工程ロードマップと、大手テック企業からの追加受注の有無にある。ハン・ジンマン Samsung Electronicsファウンドリー事業部長(社長)は最近、「来年の黒字転換は容易ではないが、2028年には黒字達成の可能性が高い」と述べている。
Intelが米国内生産という地政学的な優位を前面に押し出す中、Samsung Electronicsが今回のフォーラムでどのような技術戦略を示し、顧客基盤を維持・拡大できるかが、黒字転換の時期を左右する分岐点となりそうだ。