今週の暗号資産市場では、XRPの反発期待が広がる一方で、XRP Ledger(XRPL)のネットワーク活動が急減するなど、強弱材料が交錯した。米クラリティ法案も7月4日までの成立が難しいとの見方が広がり、規制を巡る不透明感が改めて意識されている。ビットコインは引き続きレンジ圏で推移し、アルトコイン全体への資金流入も限られた。
市場の注目を集めたのはXRPの反発シナリオだ。XRPは高値から60%以上下落した水準で推移しているが、複数のアナリストは今回の調整局面を上昇サイクル前のリテストと位置付け、8ドル台までの上昇余地に言及した。
価格シナリオは大きく3方向に分かれる。強気派の一部は6.5ドル、13ドル、さらには60ドルまで視野に入れる一方、慎重な見方でも1.50ドル帯の上抜けが短期的なトレンド転換の節目になるとの見方が多い。
オンチェーンデータでは、XRPアドレスの93%を小口ウォレットが占める一方、保有量は流通量の2.7%にとどまることも示された。保有が少数の大口投資家に偏っている構図を示すデータで、相場上昇局面でも個人投資家の利益確定売り圧力は相対的に限定される可能性があるとの解釈につながっている。
一方、XRPが対ビットコインで明確な相対優位を示せない中、Stellar(XLM)のみが大きく上昇する場面もあった。市場では、Rippleエコシステム内で資金フローに差が生じている可能性が指摘されており、Rippleの事業戦略とXRP価格の連動性を慎重に見極める必要があるとの声も出ている。
こうした価格期待とは対照的に、XRPLの実利用を示す指標は大きく落ち込んだ。オンチェーン指標では決済トランザクション件数がゼロ近くまで低下しており、XRPの実需を支えるとされる決済用途に改めて疑問符が付いている。
これに対し、Ripple側は強気姿勢を維持している。ブラッド・ガーリングハウスCEOは10周年イベント「Swell」で、暗号資産業界は転換点にあると述べ、企業決済のオンチェーン化を中核戦略に据える方針を示した。
同氏によると、Ripple Treasuryプラットフォームでは年間13兆ドル(約1950兆円)規模の企業資金フローを扱っており、その相当部分が今後5年以内にオンチェーンへ移行するとの見通しを示した。American Airlinesのペルーでの航空燃料決済を例に挙げ、従来4日かかっていた国際決済の処理時間を大幅に短縮できると強調した。
規制面では、米クラリティ法案を巡る先行き不透明感が強まった。ホワイトハウスの暗号資産評議会は7月4日までの成立を目標に掲げてきたが、上院では8月の夏季休会前を現実的な期限とみる向きが強まっている。
法案成立への主な障害は3つある。第1は、フィリバスター回避に必要な上院60票の確保だ。共和党は53議席を持つものの、可決には民主党から7票の賛成が必要となる。現時点で支持を公言している民主党議員は2人にとどまる。
第2は、トランプ大統領一族の暗号資産事業への関与を念頭に置いた倫理条項を巡る対立だ。民主党は、議員や政権高官の暗号資産関連の利益相反を制限する条項がなければ支持は難しいとの立場を示している。
第3は、法執行機関の反発だ。全米保安官協会などは、法案がブロックチェーン関連のマネーロンダリング捜査を妨げる可能性があるとして懸念を示している。
Galaxy Researchは、法案が2026年内に成立する確率を60%程度へ引き下げた。予測市場Polymarketでも、成立確率は70%前後で織り込まれている。
業界団体の働きかけも活発化している。Amazon、Apple、Googleが加盟する米技術業界団体は、上院に対して早期成立を求める書簡を送付した。一方、ゲーム業界は予測市場に関する条項の追加を要求しており、利害関係者のロビー活動は一段と強まっている。今会期で成立しなければ、包括的なデジタル資産市場規制の議論が2030年までずれ込む可能性があるとの警戒感も出ている。
ビットコインは今週も明確な方向感を欠き、レンジ圏での推移が続いた。130億ドル(約1兆9500億円)規模のオプション満期を控え、市場では弱気ポジションが優勢になっているとの見方があり、6月中の下押し圧力を警戒する声が出ている。
ビットコインドミナンスは60%を上回る水準で推移している一方、アルトシーズン指数は基準値の75に遠く及んでいない。Ethereum、Cardano、Zcoinなど一部主要アルトコインが個別材料で反発を試す場面はあったが、市場資金は引き続きビットコインとステーブルコインに集中している。
アンソニー・スカラムーチは今週、ビットコインの強気材料を5点に整理し、「反政府資産」としての構造的な魅力を強調した。市場では、アルトコインへの本格的な資金循環、いわゆるアルトシーズンはなお見込みにくいとの見方が広がっている。
このほか、機関投資家の採用拡大を示唆する話題もあった。日本の企業年金基金が、運用資産の1%を暗号資産に配分する案を検討していると報じられた。日本の機関投資家による暗号資産投資はなお初期段階にあるが、年金資産の規模を踏まえると、グローバルな資金フローに一定の影響を与える可能性がある。
Binance創業者のチャンポン・ジャオ(CZ)は、AIエージェントが今後、世界で数十億人規模に暗号資産ベースの金融サービスを広げる担い手になるとの見通しを示した。BitwiseのCEOも、現在の暗号資産市場は2000年代のドットコムバブル崩壊後の局面に似ており、最終的には勝者総取りの構図で再編が進むと指摘した。過熱感が後退する中、実用性とインフラを備えたプロジェクトだけが生き残る選別局面に入ったとの見方だ。