ドナルド・トランプ米大統領は19日、Anthropicについて、現時点では国家安全保障上の脅威とはみていないとの認識を示した。G7首脳会議の場でダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)と面会した後の発言だ。一方で、商務省によるアクセス承認要件や、連邦機関での利用禁止など既存の規制措置は維持する。
Cryptopolitanによると、トランプ氏はAnthropicやアモデイ氏が脅威に当たるかとの問いに対し、「今はそうではないが、1週間前ならそうだったかもしれない」と述べた。国防生産法を発動することは可能だが、その必要はないとの考えも示した。
ただ、規制自体を見直したわけではない。商務省が12日に決定した措置により、外国籍の利用者が「Mythos 5」と「Fable 5」にアクセスするには、連邦政府の承認が必要となっている。
また、国防総省が3月3日に行ったサプライチェーンリスク指定も撤回されておらず、連邦機関によるAnthropic技術の利用禁止も続いている。
認識変化のきっかけとなったのは、17日にフランス・エビアン=レ=バンで開かれたG7の昼食会だ。アモデイ氏はデミス・ハサビス氏とともに、米国主導のAI連合構想を提案した。
この構想は、民主主義国が先端AIの貿易や標準を共同で調整し、中国を排除する枠組みを念頭に置いたものとされる。各国がAI規制を巡って分断すべきではないとも訴えた。
トランプ氏は昼食会後、アモデイ氏を「賢く、好感の持てる人物」と評した。両者が対面したのは、3月のサプライチェーンリスク指定後では今回が初めてだった。
これに先立ち、2月にトランプ氏がTruth Socialで出した指示では、Anthropicの経営陣について、国防総省に対してイデオロギー的に敵対的だと位置付けていたとされる。
商務省の措置の直接の契機としては、Amazonによる脆弱性報告が挙げられている。トランプ氏は、ハワード・ラトニック商務長官がアモデイ氏に連絡した背景について、Anthropicの投資家であると同時に競合でもある企業から問題提起があったと説明した。
AmazonはAnthropicに80億ドルを投資しており、AWS Bedrockでは競合モデルも運用している。Anthropicは12日の通告から90分以内の対応を迫られ、国籍別のアクセス制御を安定的に適用できないと判断した。その結果、米国外の従業員を含む全利用者に対し、2つのモデルの提供を停止した。
一連の規制は上場日程にも重荷となっている。Anthropicは5月末、650億ドル規模のシリーズH-1資金調達を終え、企業価値は9650億ドルと評価された。
その後、6月1日には米証券取引委員会(SEC)にS-1を非公開で提出した。6月初旬時点では、年間経常収益(ARR)が約470億ドルに達したと集計されたという。
主力のMythosとFableの各モデルが規制対象となったことで、規制が長期化すれば、上場時のバリュエーション算定に一段と重しとなる可能性がある。
今回の措置は、同盟国の政策対応にも影響を及ぼしている。カナダのマーク・カーニー首相は、今回の制限措置はAIサプライチェーンの構築と多角化の必要性を示していると述べた。
日本も19日に公表した政策草案で、AI法制を積極的かつ継続的に見直す方針を示した。