資産運用会社Grayscaleは、DeFi(分散型金融)レンディングプロトコル「Aave」のトークン「AAVE」について、足元の市場価格は割安との見方を示した。RWA(実物資産)のトークン化を巡る制度整備が進めば、今後1年以内に175ドルまで上昇する可能性があるとしている。
暗号資産メディアのCryptopolitanが17日(現地時間)に報じた。Grayscale Researchはリポート「Bear Market Buying Guide: Valuing Crypto Through Cash Flows」で、AAVEの評価を公表した。
今回の特徴は、伝統的な金融市場で企業価値の算定に使われる割引キャッシュフロー(DCF)モデルを、暗号資産プロジェクトの評価に適用した点にある。Aaveプロトコルが実際に生み出すオンチェーン収益や売上高を基に、適正価値を試算した。
Grayscaleは、Aaveの2026年の売上高を約6000万ドル(約90億円)と推定。これを基にした基本シナリオの適正価格レンジは80〜100ドルとした。一方、リポート公表時点のAAVE価格は約77ドルで、同レンジの下限を下回っていた。
さらに強気シナリオでは、AAVEが1年以内に約175ドルまで上昇し得ると予測した。公式X(旧Twitter)でも、現在の75ドル近辺は割安な水準だと評価している。
強気見通しの背景として挙げたのが、RWA市場の拡大余地だ。各国で実物資産トークン化に関するルールが明確になれば、DeFiレンディング市場に機関投資家の資金が流入する可能性があると分析した。
RWAのトークン化は、国債や不動産、社債といった伝統的な金融資産を、ブロックチェーン上でトークンとして発行・取引する仕組みを指す。近年は、世界の金融市場で成長が著しいブロックチェーン分野の一つとみなされている。
Grayscaleは、規制の明確化が進めば、AaveのようなDeFiプロトコルが新たな資産クラスを担保として取り込み、より多くの手数料収入を生み出せるようになると見込む。機関投資家の参加拡大も、追加の成長要因になるとした。
同社はAave関連の投資商品の拡充も進めている。2024年10月には「Grayscale Aave Trust」を投入し、2026年初めには米証券取引委員会(SEC)にAAVE現物ETFの上場を申請した。ETFが承認されれば、機関投資家は暗号資産を直接保有せず、既存の証券口座を通じてAAVEに投資できるようになる。
Aaveプロトコル自体の規模も業界上位を維持している。DefiLlamaによると、Aaveの総預かり資産(TVL)は20以上のブロックチェーンネットワークにまたがって約131億ドル(約1965億円)。このうち100億ドル超がイーサリアム上に集中している。
収益規模も大きい。年間の手数料収入は約9億4000万ドル(約1410億円)、プロトコル売上高は約1億2400万ドル(約186億円)とされる。
もっとも、2026年に入ってからは逆風も少なくなかった。中核開発者の離脱やガバナンスを巡る論争が続いたほか、北朝鮮系ハッカー集団が別のDeFiプロジェクトから約3億ドル(約450億円)を奪った事件の後には、市場全体で預かり資産の流出が発生したという。
こうした中でも、Aave創業者のスタニ・クレチョフ氏は5月、「売上高重視のプロトコル戦略」を今後12カ月にわたり推進する方針を示した。持続的で予見可能な収益構造を確立してこそ、DeFiは投機的なトークンの枠を超え、実質的な金融サービス企業へ発展できると強調した。
Grayscaleは同リポートで、AAVEのほか、Hyperliquid(HYPE)、Uniswap(UNI)、Sky(SKY)、Maple(MPL)についても前向きに評価した。実際に収益を生むDeFiプロジェクトが増える中、伝統金融の企業価値評価手法が暗号資産市場にも広がり始めたとの見方を示している。
AAVEの先行きを左右する焦点としては、RWAの制度整備と機関資金の流入が挙げられる。DeFi市場で投機中心から収益重視への見直しが進む中、Aaveがその代表例となるか注目されそうだ。