BlackRockが、ビットコインの値上がり益とオプションのプレミアム収入を組み合わせた新ETF「iShares Bitcoin Premium Income ETF(BITA)」を投入した。安定的なキャッシュフローを求める機関投資家向けの商品として打ち出す一方、市場では、上昇局面で収益機会を取りこぼしやすい「利回りの罠」になり得るとの見方も出ている。
暗号資産メディアのCryptopolitanによると、BITAは16日にナスダックで取引を開始した。
BITAは、ビットコイン現物やBlackRockの現物ビットコインETF「IBIT」を組み入れ、ポートフォリオの約25〜35%を対象に毎月コールオプションを売却するオーバーライト戦略を採用する。オプション売却で得たプレミアム収入を、投資家への定期的な分配原資とする仕組みだ。
BlackRockは、ビットコインの上昇余地を一定程度残しながら、安定したキャッシュフローを提供できると説明している。デジタル資産部門責任者のロバート・ミトニック氏はBITAについて、「ハイブリッド型のビットコイン・エクスポージャー商品」と位置付けた。IBITの上昇分の約70%を取り込みつつ、年率で中位から後半の数%台のリターンを目指す方針も示した。
同氏は「多くの投資家にとって魅力的な商品になり得る」と述べ、これまでキャッシュフローを生まない点を理由にビットコイン投資に慎重だった機関投資家に、新たな選択肢を提供すると強調した。
ただ、市場の評価は割れている。オンチェーン・マクロ分析を手がける10X Researchは同日のリポートで、BITAが相場環境にかかわらず毎月定期的にコールオプションを売る設計になっている点を問題視した。ビットコインのコール売り戦略は特定の局面では有効でも、常に高い収益をもたらすわけではないと指摘している。
相場が大きく上昇した場合、投資家はコール売りの対価として、ビットコイン上昇分の相当部分を手放すことになる。一方、相場が横ばい、あるいは下落した局面では、プレミアム収入が損失の一部を相殺する可能性はあるものの、下落そのものを防げるわけではない。
10X Researchは過去のリポートで、ビットコイン保有者が年約70億ドル規模のオプションプレミアム獲得機会を十分に活用できていないと分析していた。ただ、収益面で優位に立てるのは一部の条件がそろう期間に限られるとしている。市場環境を考慮せず、毎月同じ方式でコールを売る商品設計は、期待リターンを押し下げかねないというのが同社の見立てだ。
論点は商品性にとどまらない。BITAがビットコインのオプション市場そのものに影響を及ぼす可能性も指摘されている。大規模な機関マネーが継続的にコール売りへ回れば、オプション市場のインプライド・ボラティリティを押し下げる圧力になり得るためだ。
実際、ビットコインの30日物インプライド・ボラティリティは、近年オーバーライト戦略の広がりとともに低下傾向を示してきた。約486億ドル規模の現物ビットコインETFを運用するBlackRockが、オプションプレミアムの供給主体として存在感を強めれば、市場構造の変化につながる可能性があるとの見方もある。
BlackRockは、BITAの主要な顧客層として、財務アドバイザー、保険会社、年金基金を挙げた。これらの機関はビットコインの成長性には関心を寄せる一方、収益を生まない資産であることから投資に慎重だったとされる。
ミトニック氏は「これまで機関投資家がビットコインの組み入れをためらってきた理由の一つは、キャッシュフローがないことだった」とし、「BITAはその課題に対応する商品だ」と説明した。
BITAの運用手数料は年0.65%。設定時点の純資産は約1050万ドルという。市場では、すでに運用されているNeos Bitcoin High Income ETFと競合するとみられるほか、Goldman Sachsも類似した構造の商品投入を進めている。
もっとも、市場環境は必ずしも追い風ではない。米上場の現物ビットコインETFでは直近1日で約6400万ドルの資金が純流出し、6月の累計純流出額は21億ドルを超えた。ビットコインは現在、6万5000ドル近辺で推移している。
BITAは、ビットコインの上昇余地の一部と引き換えに、安定的なキャッシュフローの確保を狙う商品だ。機関投資家に新たな投資手段として受け入れられるのか、それとも上昇局面で収益を抑える商品とみなされるのか。評価は今後の相場展開に左右されそうだ。