暗号資産マーケットメーカーのWintermuteは17日、足元のビットコイン相場の反発について、本格的なトレンド転換ではなく、マクロ環境の改善を受けた「安心感による上昇」にとどまる可能性が高いとの見方を示した。主要な資金流入ルートであるステーブルコインや現物ETFに回復の兆しは乏しく、夏場には5万ドル台まで下押しする可能性もあるとみている。
Wintermuteは、金融市場と暗号資産市場の反発を支えた背景として、マクロを巡る不確実性の後退を挙げた。5月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比4.2%上昇と市場予想の範囲内に収まり、コア指数も2.9%へ鈍化した。
さらに、100日超続いたイランを巡る紛争が終結局面に向かったことで、ブレント原油価格は1バレル=110ドル台前半から80ドル台後半まで下落し、地政学リスク・プレミアムも急速に縮小したと分析した。
こうした流れを受けてリスク選好も持ち直した。原油市場から流出した資金が小型株やアルトコインに向かった結果、アルトコインとRussell 2000指数は、ビットコインやNASDAQを上回る反発を見せたという。
Wintermuteは、こうした値動きを市場全体の安心感がもたらした動きと位置付けた。
一方で、ビットコインそのものの相場については慎重な見方を崩していない。6月初旬の暗号資産市場の急落を巡っては、Strategyによる32BTCの売却や財務不安が原因との見方が広がったが、Wintermuteはこれを明確に否定した。
下落の背景としては、インフレ懸念の強まりに加え、米雇用指標の強さを受けた全般的なリスク回避を指摘した。そのうえで、5月中旬に6万ドル台から8万3000ドル近辺まで進んだビットコインの戻り局面は、「弱気相場のラリー(ベアマーケット・ラリー)」にとどまったとの見方を示した。
デリバティブ市場も、なお明確な方向感を欠いている。永久先物とオプション市場では方向性ポジションへの選好が弱く、夏場まで調整局面が続く可能性を基本シナリオとして示した。
焦点は流動性の回復だ。Wintermuteは、暗号資産は依然としてマクロ資産としての色彩が強く、市場の超過流動性がどの経路を通じて流入するのかを見極める必要があると強調した。
主要なルートとして挙げたのは、ステーブルコイン、現物ETF、そして暗号資産を主要資産として保有・運用する上場企業だ。ただ、現物ETFは過去最長の資金流出を記録し、関連上場企業の運用資産は約2200億ドルから約1400億ドルへ減少した。
現時点では、いずれのルートにも資金流入への反転を示すシグナルは見当たらないという。
Wintermuteは、こうした状況が変わるまではビットコインの底打ちを判断するのは時期尚早だとした。実際のトレンド反転を見極めるには、ステーブルコインの発行・償還、ETFの資金フロー、関連上場企業の投資活動に構造的な変化が必要だと説明した。
もっとも、長期投資の観点では依然として魅力が残るとも評価した。現在のビットコイン価格水準は、長期のリスク・リターンの観点で十分に魅力的なゾーンにあり、急落が繰り返されるほど、より質の高い長期保有者層が形成されている点も指摘した。
ただし、それが直ちに底打ちを意味するわけではないともくぎを刺した。商いが細りやすい夏場の相場では、状況次第でビットコインが5万ドル台まで下押しする可能性も排除できないと警告した。
市場の焦点は、目先の価格反発そのものよりも、ステーブルコイン、現物ETF、関連上場企業を通じた資金流入が再び回復するかどうかに移っている。