宇宙太陽光発電を巡っては、軍事利用や素材調達、国内生産の動きが広がっている。写真=Shutterstock

米空軍が、宇宙太陽光発電を遠隔軍事作戦の新たな電源として検討している。衛星で発電した電力を地上へ無線送電し、燃料補給の負担を減らして作戦効率の向上につなげる狙いだ。

電気自動車メディアのCleanTechnicaが15日(現地時間)に報じた。これによると、米国防総省は衛星向け太陽電池の中核材料であるゲルマニウムの供給支援に加え、民間企業との契約や技術実証も並行して進めている。

国防総省は今年1月、米国内でゲルマニウムを生産する企業に1810万ドル(約27億円)を拠出した。ゲルマニウムは高効率太陽電池のほか、赤外線光学機器、暗視装置、監視機器、兵器の照準装置などにも使われる戦略物資とされる。

軍用・民生衛星向け電力供給用の太陽電池に欠かせない素材として用途が広がっており、その重要性は一段と高まっているという。

米空軍は、宇宙太陽光発電が兵站システムの構造的な課題を補う有力な選択肢になり得るとみている。現在の遠征作戦は、ディーゼル発電機や燃料輸送車両、空中補給体制への依存度が高い。

こうした方式は物流コストがかさむうえ、敵に探知されるリスクを高め、操縦士や整備要員の負担も大きいと指摘されている。

空軍が想定する宇宙太陽光システムは、軌道上で24時間太陽エネルギーを集め、無線で地上の受信設備に送る仕組みだ。天候の影響を受けにくく、送電網のない遠隔地にも安定して電力を供給できる点を強みとする。

米空軍は5月、米エネルギー企業Overture Energyと契約し、大規模な遠隔軍事作戦に宇宙太陽光システムを適用できるかどうかの検証を始めた。Overture Energyは、今後10年以内に宇宙から地球へ電力を送る商用サービスの実現を目指している。

同社は現在、空中プラットフォームを使った送電実験を進めている。2028年には関連装置を軌道上に配置する計画で、2030年前後にはメガワット級の電力を地上へ供給し、2030年代初頭には地球上のどこへでも24時間ギガワット級のクリーンエネルギーを送れるようになるとの見通しを示している。

空軍内部でも研究は進んでいる。教育機関のAir Universityは、インド太平洋地域における燃料補給の課題解決を目的に「PERSEUS」プロジェクトを推進している。

PERSEUSは「Pacific Expeditionary Resilient Energy from Space for Unlimited Supply」の略称だ。

研究チームは直ちに実戦配備すべきだとは主張していないが、衛星から移動型受信機へ無線送電する小型の概念実証モデルについては、すでにデモを実施した。固定施設ではなく移動する兵力や装備を追随して支援できる必要があるとして、軍事利用の可能性を高く評価している。

空軍は、宇宙太陽光発電が将来的に兵站負担を軽減し、分散作戦を支える中核技術になり得るとみる。関連報告書では、「宇宙ベースの太陽光は兵站負担を減らし、分散作戦を支援し、空軍と統合軍の作戦テンポを高め得る将来能力」と評価した。

米国では、技術開発と並行してサプライチェーン再編の動きも加速している。米防衛企業York Space Systemsは4日、宇宙太陽光関連スタートアップのSolestialを買収すると発表した。中国依存の高い宇宙太陽光のサプライチェーンを、米国内生産へ切り替えるうえで意義があると説明している。

Solestialは米空軍と米航空宇宙局(NASA)の支援を受けてきた企業で、昨年から次世代太陽電池の量産準備を進めている。

今年初めには、破産した欧州太陽光企業Meyer Burgerの特殊製造装置も取得した。Solestialは最近、ウエハーから太陽電池セルまで一貫して自社生産できる工程の構築を進めており、ドイツの一部生産施設を米国へ移して統合サプライチェーンを整える計画だ。

もっとも、宇宙太陽光技術の短期的な商用化には慎重な見方もある。業界では、現段階の主な用途は地上送電網向けというより、衛星向け電力供給や軍用の遠隔電力技術に集中するとの見方が多い。

このため、米国の宇宙太陽光戦略は当面、大規模な商用電力供給よりも、衛星向け電源の確保と軍向け送電技術の実証に軸足を置くとの見方が出ている。

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