SpaceX株が上場後2日連続で上昇し、時価総額は2兆5000億ドル(約375兆円)を突破した。イーロン・マスクCEOが2030年までに年商1兆ドル(約150兆円)に達する可能性に言及したことを受け、個人投資家の買いに加え、暗号資産市場にも資金流入が広がった。
ブロックチェーンメディアのCryptoSlateによると、15日(現地時間)のSpaceX株は170ドル前後で取引を開始し、前日比約6%高で推移した。その後も上げ幅を広げ、終値は19.22%高の192.46ドル。上場初日に19%上昇したのに続き、公開価格の135ドルに対して2日間で42%超上昇した。
時価総額は2兆5000億ドルを上回った。今回のIPOでは約750億ドル(約11兆2500億円)を調達し、過去最大規模のIPOとなった。
初動の買いを主導したのは個人投資家だ。Vanda Researchによると、個人投資家は上場初日の13日にSpaceX株を9380万ドル(約141億円)買い越した。IPO銘柄としては過去最大規模の個人買い越しという。
同日、SpaceX株は米株市場における個人投資家の売買代金全体の約4%を占めた。買い越し額はNVIDIAの3.5倍を超えた。
こうした投資熱は暗号資産市場にも波及した。SpaceX関連のデリバティブ取引が急増し、Coinglassによると、先物取引高は約9億3000万ドル(約1395億円)と140%増加。建玉(OI)も5億4000万ドル(約810億円)を超えた。
トークン化株式を扱う取引所でも同様の動きがみられた。gate.comで取り扱うSpaceX連動トークン「SPCX」は、上場初日に取引高が1億ドル(約150億円)を突破し、同取引所のTesla関連商品やCircle関連商品の取引高を大きく上回った。
市場心理を支えたのは、マスク氏が示した長期成長シナリオだ。同氏は週末、X(旧Twitter)に「SpaceXは2030年までに年商1兆ドルを達成できる」と投稿し、「2031年になっても1兆ドルを超えていなければ、むしろ驚きだ」と続けた。
この発言は、すでに高水準にあるSpaceXの企業価値に対し、さらに強気の成長見通しを示したものとして受け止められた。
もっとも、足元の実績と目標の隔たりは大きい。SpaceXの2025年売上高は約187億ドル(約2兆8050億円)と推定されており、マスク氏の目標を実現するには、今後5年で売上高を50倍超に拡大する必要がある。
この水準は、Morgan Stanleyが予想する2030年の売上高3300億ドル(約49兆5000億円)の約3倍に当たる。
SpaceXは、Starlink、Starshield、Starshipを将来の成長エンジンに位置付けている。衛星インターネットのStarlinkは最大の収益源とされ、政府・国防向け衛星通信のStarshieldには公共部門需要の拡大が見込まれる。次世代宇宙船Starshipは、月探査や火星開発、宇宙物流市場を視野に入れた長期成長の柱とみられている。
同社は目論見書で、AI、通信、宇宙インフラを含む総アドレス可能市場(TAM)を最大28兆5000億ドル(約4275兆円)と提示した。
一方で、収益性にはなお課題がある。2026年1〜3月期の設備投資は101億ドル(約1兆5150億円)と、前年同期の41億ドル(約6150億円)から大幅に増加した。AIインフラ整備やStarship開発、長期の宇宙関連プロジェクトへの投資拡大が反映された。
同社は2025年に約50億ドル(約7500億円)の純損失を計上し、直近数年の累積損失は約500億ドル(約7兆5000億円)に達すると推定される。目論見書でも、今後黒字化できない可能性に触れている。
こうした点から、市場の評価は分かれている。CFRAは、高い成長前提に立つバリュエーションと巨額の設備投資を理由に、慎重な見方を示した。一方、一部投資家の間では、Starlinkと宇宙産業の潜在力を踏まえれば、現在の企業価値はなお正当化できるとの見方も出ている。
Swissblockのマクロ経済アナリスト、ヘンリク・ゼバーグ氏は「市場は赤字企業を世界最高水準の価値で評価している」と指摘し、「歴史上最大級のバブルの一つになり得る」と主張した。その一方で、「最終的な天井に達する前に、なお一段高の余地がある」とも付け加えた。
ウォール街の目標株価も大きく割れている。Loop Capitalは349ドル、Bairdは320ドル、Bernsteinは310ドルを提示した。一方、Oppenheimerは190ドル、New Street Researchは165ドルとした。
平均目標株価は約267ドルで、市場が今後の売上高成長と収益性改善をどう見極めるかによって評価が分かれていることを映している。
市場では今後、Starlink加入者の増加、Starship開発の進捗、政府契約の拡大、AIインフラ投資の成果が、SpaceX株の一段高を左右する主要な変数になるとみられている。