ウクライナが実行した大規模ドローン攻撃「蜘蛛の巣作戦」(Operation Spiderweb)が1年を迎えた。TechRadarが5日(現地時間)、117機のドローンを使ってロシア国内5カ所の空軍基地を同時攻撃し、航空機最大41機に損害を与えたと報じた。
同作戦は、これまでのドローン攻撃の中でも最も成功した事例の一つとみられている。ウクライナ側の推計では被害額は約70億ドルに上り、標的はロシア国内の5つの空軍基地に分散していた。最も遠距離の標的は、ウクライナから約4300キロ離れたシベリア東部のベラヤ基地だった。
作戦準備には18カ月を要した。使用されたドローンは部品の状態でロシア国内に持ち込まれ、現地で組み立てられた後、トラック上の移動式キャビンに隠されたという。起動にはロシアの携帯通信網が使われ、現地要員の関与を最小限に抑える設計だったとされる。
ウクライナ側は、ロシア国内5つの空軍基地で航空機最大41機が損傷したと集計している。軍事紛争に直接関与していない国々も、この作戦を通じて非対称攻撃の威力に注目している。
軍事専門家の間では、この作戦をロシア版「真珠湾攻撃」に例える見方もある。イランが大量生産しているShahedドローンの単価は約2万ドル(約300万円)とされ、数十億ドル規模の軍事資産を低コストで無力化し得ることを示した点で衝撃は大きい。
米国も同作戦を注視している。米軍は世界で4790カ所の軍事施設を運用しており、このうち国内の主要基地だけでも824カ所に上る。空母11隻も常時展開しているとされる。米国はレーザー、マイクロ波、電子戦(EW)を活用した対ドローンシステムや強化格納庫を導入しているが、ドローンの小型化と知能化が進む中、装備の追加だけでは不十分で、運用思想そのものの見直しが避けられないとの指摘が出ている。
「蜘蛛の巣作戦」が突き付けた最大の教訓は、防衛線の内側がもはや安全地帯ではないという点だ。多くの基地防衛体制は外部からの脅威を前提に設計されてきたが、同作戦はドローンを内部に持ち込み、現地で組み立て、内側から攻撃する手法でその前提を崩した。対ドローン装備の拡充だけでは十分でないことを示した形だ。
基地内に持ち込まれる物資や人員の管理、民間通信網の利用遮断、高価値資産の分散配置など、防衛運用全体の再設計を求める声は強まっている。低コストのドローン1機が数億ドル規模の戦闘機に対抗する時代には、軍事力の優位は資産規模だけでは担保できないことを、ウクライナは示したといえそうだ。