AIの普及を背景にデータセンター建設が加速するなか、電力に続いて「水」が重要な制約要因として浮上している。サーバー冷却に大量の水を使うことが地域社会の負担になりつつあり、巨大IT各社は冷却方式の見直しを急いでいる。
米ITメディアArs Technicaが4日(現地時間)に報じたところによると、イーロン・マスク氏の宇宙企業SpaceXは最近、関連書類を修正し、水不足や干ばつ、水使用規制が今後のデータセンター開発に影響する可能性があると明らかにした。
データセンターでは、数千台規模のサーバーが発する熱を抑えるため、大規模な冷却設備を常時稼働させる。この分野で広く採用されている方式の一つが蒸発式冷却だ。
蒸発式冷却は、淡水でサーバーの熱を吸収し、冷却塔で水を蒸発させて冷やす仕組みだ。電力消費を抑えやすく、エネルギー効率の向上につながる一方で、大量の水を必要とする。Googleの米アイオワ州カウンシルブラフスのデータセンターでは、昨年の水使用量が10億ガロン(約38億リットル)を超えたとされる。
問題を一段と大きくしているのが、AI需要を受けた大型データセンターの急増だ。米ローレンス・バークレー国立研究所が報告書で、ハイパースケールデータセンターが現在の蒸発式冷却を維持した場合、2030年までに最大330億ガロンの水を使用する可能性があると予測した。夏場は冷却需要と住民の水使用が同時に増えるため、水不足地域では対立が深まる懸念もある。
こうした状況を受け、巨大IT各社はそれぞれ対策を打ち出している。MicrosoftとOpenAI、Oracleはここ数カ月、蒸発式冷却への依存度を下げる計画を公表した。OpenAIとOracleが進める大規模AIインフラ計画「Stargate」についても、水不足が深刻なテキサス地域を含むことから、冷却方式の変更は避けられないとの見方が出ている。
一方、Googleは立地ごとの水資源事情に応じて最適な手法を選ぶ方針を示した。データセンターが立地する地域で水資源の補充事業を拡大するほか、再利用水や再生水の活用比率も高めるとしている。各地域の水環境を分析し、最適な冷却方式を選ぶデータ主導のフレームワークも運用しているという。
Googleでインフラ・サステナビリティを統括するベン・タウンゼンド氏は、「水が不足する地域もあれば、比較的豊富な地域もある」としたうえで、「すべてのデータセンターに同じ冷却戦略を当てはめるのは現実的ではない」と説明した。
もっとも、水使用量の削減が常に環境面で有利とは限らない。米カリフォルニア大学リバーサイド校のシャオレイ・ラン教授の研究チームは、データセンターが一定水準で蒸発式冷却を活用した場合、米国の電力網で10〜30ギガワット(GW)分の電力余力を確保できると分析した。
水の使用を減らす一方で、冷却に必要な電力消費が大きく増える可能性があるためだ。実際、GoogleはEUに提出した資料で、水資源が比較的豊富な地域では蒸発式冷却が持続可能なデータセンター運用に寄与し得ると主張した。AIサービスの拡大でデータセンターの電力消費と炭素排出が急増するなか、水使用量を抑えるために冷却用電力を増やせば、別の環境負荷を招きかねないという説明だ。
地域社会の反発も強まっている。Googleはチリ・サンティアゴ郊外で進めていたデータセンター計画で、水使用への懸念から一部許可を取り消され、事業計画を中断したことがある。米オレゴン州でも、データセンターの水使用量の開示を巡って論争の的となった。
専門家は、最終的にはデータセンター業界が水と電力のバランスを取る必要があるとみている。Microsoftで水戦略を統括していたプリシラ・ジョンソン氏は、「水とエネルギーの間には明確なトレードオフがある」と指摘。「企業が両方の資源を減らせる、より効率的な設計を示すよう促すには、社会的圧力と規制が必要だ」と述べた。
AI競争がデータセンター建設競争へと広がるなか、今後は電力の確保だけでなく、水の確保もグローバルテック企業にとって中核課題になりつつある。