写真=Reve AI

【台北(台湾)】台北・南港展覧館で開催されたCOMPUTEX 2026は、従来のPC中心の展示会とは様相が大きく変わった。会場ではマザーボードやグラフィックスカード、ゲーミング機器に加え、「AIファクトリー」「エージェンティックAI」「800VDC」といった言葉が前面に並び、AIが展示全体の主役に浮上した。

COMPUTEXは、台北で毎年開かれる世界有数のIT・ハードウェア見本市だ。完成品中心のCESに対し、PC、サーバー、半導体、データセンター機器など、サプライチェーンの中核を担う技術や製品が集まる点に特徴がある。今後のIT産業の方向性を占う場として知られるが、今年の焦点は明確にAIへ移った。

変化を最も強く印象づけたのはNVIDIAだ。同社は今回、AI開発向け端末「RTX Spark」と「DGX Station」を披露し、AIをデータセンターだけでなく個人のデスクにも広げる構想を打ち出した。

RTX Sparkは統合メモリ128GBを搭載し、120億パラメータ級の大規模AIモデルのローカル実行を想定する。DGX Stationは748GBメモリを備え、デスクサイド型のAIサーバーとして位置付けられる。ノートPCの一般的なメモリ容量が16GB前後であることを踏まえると、こうした新端末は大幅な大容量化を前提にしていることが分かる。

従来のAI PCが写真補正や文章要約などを主な用途としてきたのに対し、今回示された方向性は一段踏み込んでいる。クラウドに依存せず社内データをAIで分析し、エージェントが自律的にファイルを開いてコードを実行し、その結果を検証するような利用まで視野に入れる。

こうした変化に素早く反応していたのが台湾企業だ。TSMC、ASUS、Gigabyte、Delta、Lite-Onなどの関連企業は、AIサーバーラックの設計から冷却、電力インフラまで含めた提案を前面に打ち出していた。

特に目立ったのは電力分野の動きだ。AIサーバーラックの電力密度が急速に高まる中、従来の48V中心の構成では限界が意識され始めている。会場では、これを800VDCの高電圧直流配電で補おうとする提案が相次いだ。DeltaやLite-Onが示した110kW級の電力シェルフや、MW級の冷却水分配装置(CDU)などは、高密度AIインフラ向け製品の具体化が進んでいることをうかがわせた。

冷却分野でも同様の流れが見られた。高密度AIラックの発熱は、従来の空冷だけでは処理しにくくなっており、水冷の採用が前提になりつつある。Wiwynnが両面冷却プレートや液体金属TIMといった技術を前面に押し出したのも、こうした潮流を反映したものだ。

AIの裾野はデータセンターの外にも広がり始めている。NVIDIAが発表したフィジカルAIプラットフォーム「Cosmos 3」は、ロボット、自動運転、工場自動化といった次の展開を示した。Qualcommのロボット向け「Dragonwing」プラットフォームや、MediaTekの車載・エッジAI戦略も、同じ方向性を示していた。

もっとも、普及にはなお課題もある。128GB級のAI PCが一般消費者に広く浸透するには、当面は価格が障壁となる。フィジカルAIも収益化までには時間を要する見通しだ。AIサーバーの生産が増えても、サーバーメーカーの利益率が自動的に改善するわけではなく、部材調達の負担増とNVIDIA依存の高まりが同時に進む構図もある。

それでも、今回のCOMPUTEXが示した方向は明確だ。AIはもはやクラウドデータセンター内のGPUにとどまらず、個人のデスク、企業のサーバールーム、工場、自動車へと浸透しつつある。台湾のサプライチェーンはその変化を先取りし、電力、冷却、端末まで含めた対応を急いでいる。COMPUTEXはPC時代を象徴する展示会だったが、いまやAI時代の実装を映し出す場へと姿を変えつつある。

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