Nissanが、次世代EVの中核技術と位置付ける全固体電池で、価格競争力の強化に乗り出した。高価なニッケルやコバルトの代わりに硫黄系材料を採用し、電池コストの引き下げを図る。中国勢が主導する電池の価格競争に対抗する狙いもある。
4日付のEV専門メディアElectrekによると、Nissanは英電池企業Gelion、Nissan Technical Center Europe(NTCE)、オックスフォード大学と共同で、全固体リチウム硫黄電池の開発プロジェクト「Cost-effective, Resilient Solid-state Li-S」を進めている。
計画期間は3年。総事業費は約340万ポンドで、このうちGelionは英政府の支援金として約240万ポンドを受け取る。
開発の柱となるのは、硫黄系正極材料を使った全固体リチウム硫黄電池だ。Gelionが手がける硫黄系正極活物質「NES」は、従来電池で使われる高価なニッケルやコバルトを、比較的安価で資源量の豊富な硫黄で代替できる点を特徴とする。
各社・大学はこの協業を通じて、高エネルギー密度と高出力を両立する全固体リチウム硫黄電池パックの開発を目指す。Nissanは全固体電池の技術を提供し、Gelionは硫黄系正極材の技術を担う。
業界では、この取り組みが中国勢による価格主導の競争への対抗策となるかが焦点となっている。投資会社Longspur Capitalは最近のリポートで、Gelionの硫黄系正極技術について、既存のリチウムイオン電池に加え、ナトリウムイオン電池の性能改善にも応用できると評価した。
同社はあわせて、全固体電解質技術が次世代電池市場の重要なイノベーションになる可能性が高いと指摘。Gelionがこの分野で正極材技術の開発も進めていると分析した。
商用化のタイミングも、NissanのEV戦略と重なる。Gelionは2027会計年度中の商用プロトタイプ公表を目標としており、Nissanが2028年に全固体電池ベースのEVを初投入するとしている計画時期に近い。
Longspur Capitalは、Nissanが今後、全固体EVの価格競争力を高めるため、Gelionの硫黄系技術を積極的に活用する可能性があるとの見方を示した。
プロジェクト責任者のアドリアン・アミグ氏は「今回の協業は、英国とNissan、そしてGelionのいずれにとってもゲームチェンジャーになり得る」とした上で、「硫黄系技術は全固体電池ととりわけ高い相乗効果を生み出せる」と述べた。
Nissanは生産インフラの整備も急いでいる。1月には横浜工場に同社初の全固体電池パイロット生産ラインを設置。米電池技術企業LiCAP Technologiesとも、量産に向けた協力を進めている。
LiCAPの乾式電極プロセスを活用すれば、従来の電池製造で必要だった乾燥工程や溶媒処理工程を減らせるとしており、生産コストの低減と効率改善を見込む。
もっとも、全固体電池を巡る競争はNissanだけのものではない。中国ではBYDを含む複数企業がすでに試作電池のテストを進めており、一部企業は数カ月以内に全固体電池搭載車を公表する準備を進めているという。
BYDも硫化物系の全固体電池を開発しており、来年から小規模生産を始めた後、2030年前後に量産体制を構築する計画とされる。
一方でNissanは、英サンダーランド工場への投資拡大も進めている。最近では、中国の自動車メーカーCheryと、同工場での車両生産協力の可能性を検討するための業務協約(MOU)を締結した。
Nissanは電池技術の開発と生産体制の見直しを並行して進め、EV市場での競争力向上を急ぐ。