米ホワイトハウスが、石炭火力発電の支援に7億ドル(約1050億円)の公的資金を追加投入する方針であることが分かった。閉鎖済みの発電所の再稼働に加え、新設計画も含まれており、縮小が続いてきた米国の石炭政策を見直す動きとして注目を集めそうだ。
米メディアElectrekが4日付で報じたところによると、ホワイトハウスは既存の石炭火力発電所13カ所を支援する。あわせて、アラスカ州とウェストバージニア州では新たに2カ所の石炭火力発電所建設を進める方針という。
ホワイトハウスは同日、国防物資生産法(DPA)を根拠に緊急支出を承認する見通しだ。DPAは冷戦期に制定された法律で、国家安全保障上の必要時に政府が戦略産業へ直接関与できる権限を定めている。
計画には、メリーランド州で閉鎖された石炭火力発電所の再稼働に加え、カリフォルニア州での石炭輸出ターミナル開設も盛り込まれると伝えられている。
背景には、米国内で続く石炭産業の縮小がある。米国の電力生産に占める石炭の比率は2000年代初頭には約50%だったが、2024年には約15%まで低下した。石炭消費量と発電設備容量の縮小もここ数年続いている。
こうした中で、新たな石炭火力発電所の建設計画が盛り込まれた点も焦点となる。計画が実行されれば、米国で新設の石炭火力発電所が建設されるのは2013年以降で初めてとなる。
ドナルド・トランプ大統領は同日、ホワイトハウスの執務室で、米国の石炭生産力について「サウジアラビアとロシアを合わせたものの2倍だ」と主張した。さらに「中国も昨年、石炭火力発電所を52基建設した」と述べた。
その上で、「電力という観点で石炭に匹敵するものはない。代替があると言われるが、本当の代替はない」として石炭火力の重要性を強調した。再生可能エネルギーについては、「十分な出力や強度がなく、非常に高価な風力のようなものに依存して送電網を損なっている」と批判した。
一方、Electrekは今回の政策に批判的な見方を示した。同メディアは、石炭が衰退したのは規制のためではなく、コスト高に加え、汚染が深刻で信頼性も低く、市場で競争力を失ったためだと主張した。
また、電力会社が採算性の問題から石炭火力を電源構成から外してきたとも説明した。今回の支援策は米消費者のエネルギー負担を押し上げる可能性があるとし、とりわけ物価高が続く中で競争力の低い電源に税金を投じるのは政策効率に欠けると指摘した。
政策発表の場には、エネルギー省(DOE)のクリス・ライト長官、内務省のダグ・バーガム長官、環境保護庁(EPA)のリー・ゼルディン長官が出席するとみられている。Electrekは、これらの政府高官が化石燃料産業と密接な関係を築いてきたと報じた。
同メディアによると、クリス・ライト長官は石油・ガス業界の出身で、ダグ・バーガム長官とリー・ゼルディン長官は政治活動を通じて化石燃料業界から多くの支援を受けてきた人物だという。
さらにElectrekは、トランプ政権発足後、連邦政府が化石燃料産業への支援を拡大する一方、クリーンエネルギー関連政策には制約を強めていると指摘した。DOEは石炭火力向け補助金を拡大し、内務省とEPAも環境配慮型エネルギープロジェクトに関する規制の見直しや停止を進めてきたという。
専門家の間では、今回の措置が単なる石炭産業支援にとどまらず、米エネルギー政策の転換を象徴する事例となる可能性があるとの見方が出ている。ただ、石炭火力の比率低下は長期にわたって続いており、事業の実現可能性や採算性、環境コストを巡る論争は今後も続きそうだ。