イーサリアムとビットコインを巡る評価軸が、価格見通しから収益構造へ移りつつある。写真=Shutterstock

Standard Charteredは、イーサリアム(ETH)が今週からビットコイン(BTC)に対して優位に立ち始めたとの見方を示した。きっかけとして、ビットコインを大量保有する上場企業Strategyによる小規模なBTC売却と、その後のETH/BTC比率の上昇を挙げている。

ブロックチェーンメディアのCoinPostによると、Standard Charteredでデジタル資産リサーチを統括するジェフリー・ケンドリック氏は3日、「今週月曜日を、ETHがBTCをアウトパフォームし始めた起点とみている」と述べた。

発端となったのは、Strategyによる32BTCの売却だ。同社は5月26日から31日にかけて、平均7万7135ドルで32BTCを売却した。米証券取引委員会(SEC)への提出書類によれば、売却で確保した約250万ドルは優先株の配当支払いに充てる予定。売却後の保有量は約84万3706BTCで、処分したのは総保有量の約0.0038%にとどまる。

ケンドリック氏は、売却規模そのものが市場に与える影響は限定的だと指摘した。「32BTCの売却は笑ってしまうほど小さい」としながらも、「重要なのは市場がこれをどう受け止めるかだ」と説明した。

実際、売却が伝わった後、ETH/BTC比率は大きく上昇した。その後もイーサリアムはビットコインに対して約5%上昇したという。

これを踏まえ、Standard Charteredは年末時点のETH/BTC目標を従来より引き上げ、現在の約0.028から0.040に修正した。ビットコインとイーサリアムが同方向に推移する前提なら、イーサリアムのリターンがビットコインを40%超上回る可能性があることを意味する。

同行は背景として、暗号資産トレジャリー企業の収益構造の違いに注目する。ビットコインを積み増す企業は、保有資産そのものがキャッシュフローを生まないため、費用の支払いや債務返済の局面では資産売却か外部調達に頼らざるを得ない。一方、イーサリアムは足元で年3%程度のステーキング収益が見込め、保有資産を売却せずに一定のキャッシュフローを確保できるとした。

具体例として挙げたのが、トム・リー氏が率いるイーサリアム中心の投資企業Bitmineだ。Bitmineは無借金で約100億ドル規模のETHポジションを構築し、自社のステーキングプラットフォームを通じて年間約2億5800万ドルの収益を生み出すと推定される。さらに今後は、年間約3億ドル規模の追加報酬収入も期待できるとケンドリック氏は分析した。

市場評価の指標であるmNAVでは、現時点ではビットコイン系トレジャリー企業が優位を保っている。BitmineやSharpLinkなど主要なイーサリアム系トレジャリー企業のmNAVは、Strategyを下回る水準にあるという。

もっとも、同氏はこの構図が変わる可能性もあるとみる。ステーキングによる継続収益を市場が織り込み始めれば、イーサリアム基盤企業のバリュエーションがビットコイン系トレジャリー企業を上回る余地があるためだ。「Strategyが今回の売却規模を大きく上回るビットコインを買い戻したとしても、長期的な見方は変わらない」と強調した。

イーサリアムの長期見通しについても強気の姿勢を維持した。ケンドリック氏は最近のリポートで、現在のイーサリアムを2001年のドットコムバブル崩壊後のAmazonになぞらえ、価格推移は冴えなくてもネットワークのファンダメンタルズは着実に改善していると評価した。Standard Charteredはイーサリアムの価格目標として、2026年末に4000ドル、2030年末に4万ドルを提示している。

今回のリポートは、単なる価格見通しというより、ビットコイン基盤とイーサリアム基盤のトレジャリー企業における事業モデルの差に主眼を置いた内容といえる。とりわけ、ステーキング収益を持つイーサリアムと、保有自体ではキャッシュフローを生まないビットコインの構造差が、今後の機関投資家の評価基準に影響を与える可能性がある。

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